三浦瑠麗がシンクタンクで得た民意知る可能性 ネットワーク型の調査・研究で明らかになる

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船橋:戦後の日本では、シビリアンコントロールが重視されてきました。それは日本に限ったことではありませんが、軍の暴走を防ぐという意味で、非常に重視されてきました。

けれど、『シビリアンの戦争』では、政軍関係というのは非常に多様かつ複雑で、「軍からの安全」だけでなく、「政治からの安全」も重要だということを指摘されています。これは非常に重い問題提起だったと思います。日本はこれまで「軍からの安全」に論議は集中してきたように思いますが、『シビリアンの戦争』の問題提起は、日本でどの程度共有され、日本の安全保障論議や軍政関係の考察にどのような影響を及ぼしていると思われていますか。

三浦:国際政治学や近現代の政軍関係の研究者は、シビリアンコントロール概念や政軍関係に親しんでいるので、その枠のなかでは、しっかりと定着したと思います。ただ、日本では、政軍関係理論を専門とする研究者が少なく、対外政策や国際政治学と分野横断で論じるものはごくごく少ないのが現状です。ここは分野横断が必要な領域なんですが。

研究者以外で一番理解していただいているのは、OBも含めた自衛隊幹部の方々です。

基本的には戦争したくないという考え

船橋:現場を知っている軍人には、基本的には戦争したくない、するべきじゃないという考えがありますよね。

三浦:はい、あります。ロバート・ゲイツ元国防長官(イラク戦争を主導したラムズフェルドの後任。イラクへの米軍増派作戦を主導し、治安改善に貢献)は回顧録『Duty』(邦題は『イラク・アフガン戦争の真実』)に「アメリカで一番大きな鳩は、軍服を着ている」と書いています。それは米軍の中ではずっと常識とされてきたことなのです。しかし、学術研究の側における常識は、軍は暴走する危険があるから、シビリアンコントロールが重要だというものでした。それは戦前の日本の関東軍の独断や、民主化途上の国におけるクーデターなど個別の経験に引きずられすぎて、歴史の全体を見ていない意見なのですけどね。

日本でもアメリカでも、「軍の暴走」ばかりを懸念して、「文民の暴走」の懸念に無自覚だと感じることは多いです。今回、「安全保障と防衛力に関する懇談会(安防懇)」の有識者メンバーとなり、防衛大綱策定に関して助言する立場に立ってみて、やはりまだひとつ前の「自衛隊を抑制し封じ込める」ことを重視する常識の方が現場には強いと感じました。

船橋:安倍総理が主宰する安防懇ですね。

三浦:ええ。私は、政軍関係に関して発言することを求められて参加したと思っています。安防懇や国家安全保障局内部の議論には、やはり政軍関係を重視する考え方が不足していましたから、そこをできる限り補おうとしたつもりです。効果的な安全保障とシビリアンコントロールを両立させるには、どこにどれだけの裁量を持たせるのか、それは平時と有事で同じでよいのか、有事のときは制服組にどこまで裁量を持たせるのかといった、政軍関係を明確にした細かな議論が必要なはずですが、そういう発想は、現場を知っているはずの制服の方々にも実は乏しいのです。

日本は戦後、戦争をしないで済んだからですが、もう少し内外の事例を研究すべきだと思います。ある意味、3.11のときと同じで、何か起こったら、その場で対応するしかないというのが日本の体質なのではないか。有事の際の備えとして、政軍関係はどうあるべきかという検討課題を提示しました。

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