三浦瑠麗がシンクタンクで得た民意知る可能性 ネットワーク型の調査・研究で明らかになる

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三浦:大阪のダブル選挙では、マスメディアの予想より、維新が大勝ちしました。その理由は、私たちの調査段階で分かっていたことでした。維新に投票してきた人たちは、維新が訴える政策が浸透し、政策の方向性に強く賛成していましたが、浮動層で維新に投票しなかった人や維新に反感を持つ岩盤反対層には、明確な主義主張、政策の方向性が見られませんでした。反対層も、維新が行った政策で上手くいったものは評価していました。例えば、「民営化」という大きな政策概念には反対でも、交通民営化という具体的な政策には賛成したりしています。

つまり、反対層にはフォロワー傾向が見られ、明確な軸がなかったのです。これが、維新が大阪で定着していることに対する各メディアの過小評価と、実態とのギャップですね。メディアの多くは、2015年は橋下徹さんの影響力が強かったから勝てたと思っていた。でも維新はすでに橋下さんを離れて定着しているんです。従って、メッセージを維新の政策の方向性で最も人気のある部分に絞り、失敗さえ犯さなければ勝てるはずだった。そもそも賛成者と反対者では投票に対する関心の強さが違いますから。

船橋 洋一(ふなばし よういち)/1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱える様々な問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年 文藝春秋)『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年 朝日新聞社) など(撮影:梅谷秀司)

他にも、政策に関して通常の調査とは異なる面白い結果が出ました。「身を切る改革」は賛成度こそ高いけれども投票行動にはまったく影響していないとか、中韓に関する有権者の態度も投票行動に影響しないということが分かりました。

では何が維新に投票する内なる政策志向となっているのか。それは、安全保障の現実主義と経済成長支持でした。高校無償化などの政策より、安全保障で間違えない、いわゆる現実主義保守であるということが意味を成していました。選挙では安全保障は票にならないと言われていますけれど、それは明確な争点になってないだけで、どの政党に投票するかを判断する上では、無党派であっても、安全保障政策は非常に大きな材料になっているのです。

日々、自分が政治を見ているときの定性的な感覚と、定量的な調査を組み合わせると、とても面白いレポートがつくれると確信しました。現状では、政治家は概ね選挙プランナーに頼って選挙をしています。メディアの側では自前の情勢調査にお金をかけています。

しかし、そこからは単純な勝ち負け予想しか出てこない。どのような政策が大事なのか、どの政策メッセージが有権者に訴えるものなのかを精緻化させていないからです。そのようなプロトビジネスではなく、世論調査を分析して民意を導き出すという手法に、シンクタンクのビジネスの可能性を感じました。

船橋:7月の参議院選挙を受けて、何か計画していますか。

政権批判の方向性は何の力学に基づくのか

三浦:参議院選挙のあとに、投票行動と合わせて、さまざまな価値観を聞こうと思っています。投票行動に、何がどれだけ重視されているとか、あるいは、政権批判の方向性というのは、一体どのような力学に基づいた批判なのかということを、明らかにすることに関心があります。大阪のダブル選のときに分かったこと、つまり、支持されていても投票行動に影響しない政策があることなどを全国の規模で行うことで、日本の民意がどこにあるのかについて、もう少し科学的に迫ることができたら、説得力があると思います。

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