でもデジタルってある種、「魔法の杖」的なところもあるので、それを使って作るのは後だしじゃんけんだと思うんです。だったら、圧倒的にすごい画を作らないと申し訳ないじゃないか、という気持ちがあります。
――ハードのスペックやソフトウェアはかなり進化しているのでしょうか。
ソフトウェアの面で見ても、昔だったらものすごく予算のあるハリウッド映画でしかできなかったことが、われわれの手の届く水準にまでなってきた。
「絵の具が行き渡った」という言い方をするんですが、誰もが絵の具を使える時代になってきたんで、その絵の具で何を描くのか、まだ誰も観たことのないような映像を見せないといけない時代になったなと思います。
ハリウッドと技術的に互角でも物量が違う
――それでもまだこれは難しい、ということはあったりするんですか。
物量ですよね。ハリウッド映画を観ると、ハイクオリティーなものの量がすごい。あらゆるところにVFXを使っています。
もちろん一つひとつを比べればできないシーンはありません。しかし、トライ・アンド・エラーの回数を重ねることで担保される映像のクオリティーが違う。それは人数もたくさんいるし、予算もたくさんあるからできる量だったりします。
それを僕らにやれと言われても、それは悪いけど、「お金と人と経験値をください」といわざるをえません。しかし、同時にそういうことではないとも思っています。それは、物量があるから映画が優れているということではなく、それで何を語るのか、VFXが映画の中でどう効果的に活かされているかということのほうが大事なことだと思っています。
――逆にハリウッドでやってくれと言われることはないのでしょうか。潤沢な予算で自由にやれるということもあると思いますが。
(そういう話は)たまにありますけどね。でも違う畑に行くのもどうかなと思っています。貧乏性なのかもしれませんが、限られた予算の中でここまでできたというほうが好きなんです。自由にやっていいよと言われたら、むしろどうなっちゃうんだろうなと思いますね。
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