新卒採用についてメディアが大きく取り上げることが増えており、とくに新聞は定期的に記事を掲載している。日本経済新聞では、火曜日夕刊に「就活のリアル」を定期掲載するほか、「就活探偵団」という企画もある。
5月15日付の就活探偵団は、「内定辞退の正しい伝え方、『直接会って、まず感謝』を」というタイトルだった。探偵団は読者に対し、4月末時点で「7割近くが内定を持ちながらも就活を続けているのが実態」と報告し、内定辞退を出さないための企業の工夫を紹介している。最近では本人だけでは心もとないので、親向けの「同意書」を用意する企業が増えているそうだ。
さらに探偵団は学習院大学が4月に開いた「内定獲得後のマナーセミナー」を取材し、担当事務長の話を紹介している。要旨は、内定を辞退する場合は礼を尽くし「先に内定していた企業の人事担当者に連絡を取ること」、「メールの送りっぱなしや電話で完結してはダメ。必ずその企業に足を運ぶこと」。
担当者と面会したときは「内定をくれたことへの感謝を、いの一番に伝えること」。それから「内定を辞退したい旨を落ち着いて説明する」と書かれている。
丁寧な指導だと思う。礼と感謝はコミュニケーションの基本だ。いつも礼を尽くし、感謝の念が相手に伝わるかどうかは別として、よき人間関係の土台には礼と感謝がある。世間知らずで、若く、経験が足りない学生に対しては、基本を指導すべきだと思う。
「必ず訪問」にかなりの反響
しかし、この記事は掲載されるやいなや、かなりの反響を呼び、疑問を呈するものが多かった。その意見を集約すると次の通りとなる。
疑問の背景には、メールや電話でもきちんと連絡すればそれでマナーにかなっているという価値観があるのだろう。また、探偵団の記事は、「メールや電話だけではダメ」、「必ずその企業に足を運ぶこと」ときつく表現している。
しかし、このような記事の読み方は単純過ぎる。確かに採用選考時期の採用担当者は多忙を極めているから、学生の内定辞退を聞くために時間を割きたくないこともある。そんなことは学習院大でも先刻承知のはず。「必ず」は学習院大が学生を指導するときに礼儀を強調するために使っているのだと思う。
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