晩年、彼は「本当に納得のいく作品は1つもない」と言ったが、それは常にプロとして理想の書をどこまでも追求し続けたことで、出てきた言葉だ。たった1つの漢字が気に入らないと、何千枚でも書きなおした。過去に個展で売れた作品ですら、後から気にくわない点が見えてくると、買戻しにいったほどだったという。
だが、書壇・詩壇では、斬新すぎる作風は嫌われ、全く評価を得られなかった。後の代表作となる、「つまづいたっていいじゃないかー」の作品では、「つまづいたら痛いだろ!」と笑われたこともあったと言う。
ようやく初書籍であり後にベストセラーなる「にんげんだもの」が世に出たのは、「自分を探求する」と決めてからほぼ30年が経った、彼が60歳の時だった。
「正解がない時代」に、自分と向き合い続けよう
実は、相田みつをが世の中でブームになるには、タイミングがある。それは一人氏曰く、「大きな困難の後」だというのだ。
阪神淡路大震災、新潟中越沖地震、東日本大震災――。大きな苦難に直面すると、順調な中では見向きもしなかったことに目を向ける人が増え、相田みつをのブームがどこからともなく、起こるという。
今回、筆者があえて「相田みつを」を取り上げたのは、これは単なる芸術家のストーリーではないと思っているからだ。悩み多き、正解がない時代だからこそ、自分に真っ直ぐに向き合いつづけた相田みつをの生き方が共感を呼ぶ。
彼は、「生かされている」という想いから、決して悔いのないように優先順位を明確にして、弱さも含めた等身大の自分で書に向かい続けた。
読者の皆様にとっての「後悔しない生き方」とはどんなものだろうか。そのための最初の決断とは、どんなものだろうか。もし、何かうまくいかないことが起きているときこそ、是非、自分らしい一歩を踏み出していただければ幸いだ。
つまづいたっていいじゃないか にんげんだものー
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