LCCピーチが「会社のために働くな」と言う理由 井上CEOが語る「会社も社員も伸びる」条件

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

社員とはどういう存在かという点でも、井上CEOの考え方を通じてPeachのベースにあるものが感じられます。それは「社員とは、この会社のために仕事をする人ではなく、自分の価値を上げるためにこの会社で仕事をする人だ」という考えです。

実際、例年の入社式で、井上CEOは入社した社員に向けて、次のようなスピーチをしているといいます。

「ピーチという会社は、自分のバリューを高めるための場です。会社のために働くなんて思わないでください。自分のために働いてください。ピーチを積極的に活用してください」

経営者が社員をどのような存在と見るかは、当人の考え方、さらには経営哲学によるところが大きいもの。井上CEOも、経営面での合理性があるからというより、一人ひとりの人生を思って、社員をこうとらえるのでしょう。しかし、社員は「会社を自分の価値を高めるために使って」とリーダーから公言されることにより、自身の仕事への向き合い方、端的にいえば、仕事へのやる気が高まるのではないでしょうか。

さらに、入社した社員にこうも伝えるといいます。

「(あなたたちに)ヘッドハントがきて高い給料で引き抜かれたとしたら、それは私の本望です。ただし、『またピーチに戻りたいな』と思ってくれるように、私もこの会社のバリューを上げていきますからね」

会社のためでなく、自分のために仕事をする。そうである以上、退社したらその会社と縁が完全に切れてしまうのではなく、また同じ会社に戻って仕事をすることが自分のためになると思えば、戻ることができる。会社と社員はそうした間柄にあることを公言しているのです。

実際、Peachには、客室乗務員を退社後、いったん別のキャリアを経て再びPeachの客室乗務員に復帰する社員も多く、社内では「大桃」と呼ばれています。いったん英会話学校のコーディネーターとして仕事をし、コミュニケーション力を養ってから、再びPeachで活躍するといったキャリアの客室乗務員もいました。

会社と社員のかかわり方が多様化しているなか、「社員は自分の価値を高めるために仕事をする存在である」「いつでも復帰のための門を開けておく」といった考え方は、経営者がもつべき新たなモデルになるのではないでしょうか。

伝わる言葉を創ることに努力を惜しむな!

世の中にある仕事や事業のほぼすべては、「伝える」という行為があって成り立っています。Peachが会社としてなにを目指しているか。これも井上CEOは社外にも社内にもわかりやすい表現で明確に伝えようとしています。

ところが、井上CEOは「自分の話は3割くらいしか伝わらない」とも言います。だから、「言葉を選んだり創ったりすることの大切さを覚え、できるだけ相手に伝わることを心がけることを惜しんではいけない」と言います。

次ページ「Peachが目指しているのは空飛ぶ電車」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事