LCCピーチが「会社のために働くな」と言う理由 井上CEOが語る「会社も社員も伸びる」条件

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井上CEOが、Peachが目指すことを伝えるために、考え抜いた言葉があります。それは、「Peachが目指しているのは空飛ぶ電車」です。「空飛ぶ電車」とはどういうことでしょうか。例えば、乗客が新幹線チケットを自動券売機で買うのと同じように、乗客が自分で航空チケットを手配します。駅で改札を通るように、空港でのチェックインも乗客が自分でします。そして、新幹線でのワゴンサービスと同様、機内の飲食はお金を払って買います。

このように、鉄道サービスではごく当然に考えられているサービスを、航空サービスで実施しているわけです。

「空飛ぶ電車」の挑戦は続く

電車に気軽に乗るような感覚を、航空機の利用客にももってもらえれば、人びとの「空の旅」はより身近なものなる。Peachとしても、乗客に電車感覚で自ら行ってもらうことで、浮いたコストを低運賃などに反映することができる。こうして、航空業界のイノベーションを起こそうとしているわけです。実際、Peach機には、花火大会に行くために浴衣で搭乗するような乗客もいるといいます。

「空飛ぶ電車」の実現に向け、いまもPeachは走り続けています。先月の6月20日、同社は初就航から約7年4か月での累計搭乗者数3000万人突破を発表しました。そして、これから控えているのがバニラエアとの統合です。「今年度末をめどに完了するバニラエアとの統合により、Peachのネットワークは国内外にさらに拡大いたします」と井上CEOはコメントしています。

世界のLCCのなかでは遅れてやってきた新参者のPeachですが、その挑戦はまだまだ続いていきそうです。もちろん、「おもろい」働き方を忘れることなく。

Peachの独創的なサービスや働き方は、すべての会社に通用するものではないかもしれません。でも、どんな仕事でも「おもろさ」を感じながら働くことは、きっと生産性を高めることにつながるでしょう。

漆原 次郎 フリーランス記者

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うるしはら じろう / Jiro Urushihara

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。また、エアライン企業をはじめとするさまざまな企業の風土や働き方などを取材し、記事や書籍を通じて伝えている。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社刊)など。

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