LCCピーチが「会社のために働くな」と言う理由 井上CEOが語る「会社も社員も伸びる」条件
筆者が取材した実感からいうと、Peachは奇をてらう会社ではなく、リーダーも社員も同じ方向を向いて堅実に進んでいる会社です。
井上慎一CEOは「なにを優先させるべきか」「社員はどういう存在か」「会社としてなにを目指すか」を明確にもっていて、それに従って意思決定をしています。そして、井上CEOの考えが社員に伝わっているからこそ、社員も「どうすべきか」と迷うことなく自分の仕事に集中でき、結果としてLCC(低コスト航空会社)としての成長を果たせているのです。
「安全性」は絶対に優先すべきこと
Peachが明確にしていることは「基本品質」の設定です。基本品質とはなにか。井上CEOは次のように説明します。
「会社、チーム、個人活動のおおもととなる作業や物品の質のこと。例えば、いつも行列の絶えない料理店があるとします。そのお店は、お世辞にもきれいとはいえない。それでも並ぶ人が絶えない。なぜかといえば『おいしいから』です。そのお店にとっての基本品質、つまり『おいしさ』が保たれているからこそ、きれいでなくても人が並ぶわけです」
Peachの場合、基本品質の第1に「安全性」があり、第2に「ちゃんと飛ぶこと」を設定しています。
安全を保つこと。これはPeachが「絶対に優先すべきこと」としています。井上CEOは「絶対に優先すべきことは『絶対』なのです。たとえほかのことを犠牲にしても、優先しなければなりません」と言います。安全が損なわれたり、お客様からの信頼性が失われると経営そのものが成り立たなくなるという、強い意識が感じられます。
Peachの安全性の最たる例の1つに「連続式耐空証明」の取得があります。耐空証明とは、航空機の車検のようなものです。通常は1機ごとに年1回、3〜4日ほどをかけて、国による検査を受けますが、「連続式耐空証明」を取得すると、毎年義務付けられている耐空証明検査を受ける必要がなくなります。
もちろん、連続式耐空証明を得るには、国から適切な整備体制が確立されていることや、継続的に安全性が保たれていることが認められる必要があります。Peachは、この連続式耐空証明を日本の航空会社としては最速の3年7か月ほどで、保有する全機で取得しているのです。
LCCは、運営にかかるコストをやりくりなどで抑えて、低運賃を実現させることが勝負のひとつ。けれども、井上CEOは「安全にかかわる部分は、お客様の印象にかかわる部分とともに、コストをかけることを惜しまない」と言っています。
あなたの会社にとっての「基本品質」とはなんでしょうか。なにが最優先にきて、なにがその次にくるでしょうか。あなたの会社の基本品質を、ほかの社員とのあいだで明確にしておくと、判断や意思決定にブレが生じにくくなり、チームとして成果を出せると思います。
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