「恐竜化石」発掘に命をかける男のすごい生活 むかわ竜を発掘した北大・小林教授に聞く

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そりゃあ、すぐにでも掘りたいですよ。でも、対象が大きければ大きいほど慎重になる。第1発見者が「骨を見つけた」って周囲の人に言っている状況で、中途半端な状態にしておくと、アマチュアの人が来て掘るおそれがある。一つひとつの化石からは、生命の営み、進化がわかるんですよ。それに頓着しないで掘って壊しちゃうと、貴重なデータが失われる。触っていない状態にして、万全の準備をして掘らないといけない。

それに、全長8メートルともなると掘ってから運ぶのも大変。林道をどうつけるかとか、抜いた木は植え直せと森林管理署から要請されたりとかで2年かかりました。植え直しなんてできませんから、そういう了解を取るのに時間がかかった。短気に出て相手を怒らせてもいいことはないですからね。関係各所の理解を得て、みんなハッピーな状態でやる必要があるんです。

恐竜化石は「地下資源」

──意外だったのは、掘ったものは現地に残すという考えです。

昔は中央が集めていた。でも、例えばむかわ竜を掘り出して、北大が持っていく、科博(国立科学博物館)が持っていく、ハイお疲れ、となったら、地元は何これってなりますよね。迷惑でしかない。

「恐竜まみれ :発掘現場は今日も命がけ」(小林快次 著/新潮社/1450円+税/238ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

恐竜化石は地下資源だと思っています。掘ったら価値のある形にして地元に残し、生かしてもらう。地域の活性化が言われている今、自治体はどこも売りになるものが欲しい。僕はたまたま、恐竜という人を引きつける力がある素材を扱っているので、町おこしのお手伝いをしたい。恐竜は、子供たちにサイエンスの面白さを伝える導入部分にもなります。

──恐竜を使った町おこしがすべて好調ではないようですが。

僕がベースとする北海道では、道と市町村、大学、社会、民間企業が手を組んで、それぞれの役割を果たして盛り上げていこうと思っています。とくに県レベルと市町村のすり合わせが不調だとうまく進まないと感じています。

──北海道赴任の30代で後進の育成を開始。早くないですか。

20歳くらいでアメリカ留学する際に、お世話になった先生から「しっかり教育を受けてきなさい。終わったら、日本に戻って研究のレベルを上げてほしい」と言われました。個人の選択としてはアメリカでの就職もあったけれど、その言葉が頭にあった。それに、研究者を育てるには10年以上かかる。最初に教えた世代が今、やっと大学の先生になり始めました。次は彼らが後進を育ててくれるでしょう。僕はできる限り今の発掘スタイルを続けたい、南米にも行きたい(笑)。その後は教え子の発掘を手伝いますよ。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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