小泉進次郎という政治家を徹底分析してみる この10年の活動や成果を総括して見えた課題

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では、小泉さんを位置づけてみたいと思います。

(出所)『自民党 価値とリスクのマトリクス』(スタンド・ブックス)

(外部配信先でお読みの場合、マトリクス画像を閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

小泉さんは、競争原理を重視し、「自助」を強調することから、縦軸は「リスクの個人化」傾向を示していると言えるでしょう。一方で、価値の問題については不明瞭なため、「どちらでもない」中間に位置づけるしかありません。

これからの小泉さんに求められること

よって、彼の位置はⅢ~Ⅳの中間(縦軸上)ということになります。これは父・小泉純一郎元首相と、おおむね同じ立ち位置です。両者は多少の政策的相違点がありますが、大きく分けると同じタイプの政治家だということができるでしょう。

父の新自由主義路線によって生じた格差・貧困の問題を、「リスクの個人化」に軸足を置きながら是正していくというのが、小泉さんの基本姿勢ということができると思います。

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農政改革での挫折。なかなか政権に採用されない社会保障の提言。小泉さんの経験不足・実績不足は否めません。

得意とする分野が偏っていることも気になります。外交・安全保障面では、アメリカだけでなく、アジア諸国との人的ネットワークも構築しなければなりません。インドとの関係はCSIS時代から継続的に構築していますが、まだまだ国際的人脈も偏りがあるように見えます。経済政策についても、明確なビジョンやスタンスを示すことができておらず、不安がつきまといます。

評価できるのは、日本全国を遊説・視察で回り、多くの人の生の声に触れてきている点です。

そのなかで「自助」の限界を理解し、被災地や過疎地で苦境に立たされている人の姿を目にしてきたことは、政治家としての幅を広げることにつながっているでしょう。

小泉さんがやるべきことは、自らの総合的ビジョンを整理し、本を書いてみることではないでしょうか。政治家になって10年という節目ですので、具体的な総理候補とみなされる次の10年に向けて、不得意分野を埋めていく作業が必要になると思います。

今の小泉さんに必要なのは、個別に追求してきた政策を統合する総合的知の獲得です。

(本記事は『論座』「中島岳志の『自民党を読む』」(朝日新聞社)の初出記事を加筆・修整したものです)

中島 岳志 東京工業大学教授

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なかじま たけし / Takeshi Nakajima

1975年大阪府生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『ナショナリズムと宗教』『インドの時代』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『下中彌三郎』『親鸞と日本主義』『超国家主義』他。

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