小泉進次郎という政治家を徹底分析してみる この10年の活動や成果を総括して見えた課題

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問題は原発政策です。小泉さんの基本姿勢は、原発推進ではありません。むしろ将来的に原発をやめていくという方向性を打ち出しています。しかし、いつまでにどのようなプロセスで脱原発社会を実現するのかという具体策については、示されていません。この点は、脱原発を鮮明に打ち出している父より、かなり慎重であいまいです。

2015年10月に党の農林部会長に就任した(撮影:尾形文繁)

小泉さんは2015年10月に党の農林部会長に就任します。これは若手の彼にとっては大役であり、かつ極めて困難なポストでした。この頃の自民党は、TPP問題で各地の農家から反対姿勢を明確にするよう、突き上げられていました。しかし、アメリカとの関係を重視する安倍政権は、TPPを推進。自民党内でねじれが生じていました。

小泉さんは、一貫してTPPを推進してきました。2011年11月、当時の谷垣禎一・自民党総裁が、TPPについて「アメリカと組みすぎて中国やアジアをオミット(排除)するのはよくない」と発言すると、小泉さんは「耳を疑う」と切り返し、露骨に反対を表明しました。ここにはアメリカのジャパンハンドラーズからの影響があるのかもしれません。

そんな彼が、TPPに抵抗する農業者対策の部会長に就任したことで、世間から大きな 注目が集まりました。小泉さんは、TPPによって日本の農家が被害を受けるのではなく、むしろ農産物を海外に売るチャンスが増えると捉え、TPPに負けない国際競争力をつけた農業を目指すべきと訴えました。

1993年のウルグアイ・ラウンド(自由貿易の拡大、多角的貿易の促進を目指して行われた通商交渉)への対策は、農家へのばらまきでした。しかし、今回はその逆をやらなければいけないと言います。補助金によって農業を過剰に守るのではなく、競争原理を働かせることで強い農家を作ることがポイントだと主張しました(小泉進次郎、金山隆一「独占インタビュー 小泉進次郎 自民党農林部会長 農林中金はいらない 農業の“護送船団”を改革する」『エコノミスト』2016年2月2日号)。

農協の改革にメス

ここから小泉さんの農業に対する構造改革へのチャレンジが始まります。

小泉純一郎元首相は郵政民営化に徹底的にこだわった(撮影:梅谷秀司)

父の小泉純一郎元首相は、郵政民営化に徹底的にこだわりましたが、小泉さんは「農協」の改革にメスを入れることになります。この両者はパラレルな関係にあると言っていいでしょう。小泉さんが一貫して目指したのは、持続可能で「儲かる農業」です。農業を補助金によって守るのではなく、むしろ成長産業にすることでグローバル化時代に対応しようと考えました。

ここで小泉さんは、農家に対して「農業経営者」という視点を持ってほしいと訴えます。日本においては「アグリカルチャー」と「アグリビジネス」は一体化しておらず、経営的視点が欠如しています。つねにアグリカルチャーが強く、アグリビジネスはおまけという位置づけで、民間資本が農業分野へ参入することを警戒し続けてきました。

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