会社で「殿、ご乱心」に遭遇したらどうする? 細川護熙氏の都知事選出馬から考える

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唯一最大の「権利」を行使するか、否か

「そんなご乱心を止める機能が会社にはあるはずだ」

と、考えたい人もいるかもしれません。確かに、役員会や株主など利害関係者(ステークホルダー)がトップのご乱心を監視・抑制する機会はあります。ただ、トップが「会社の存亡をかけて、新規事業に100億投資する。絶対にやる!」と声高に宣言すると、「右向け右」で追随してしまう状態になる組織は少なくありません。それだけ、トップのご乱心は止めるのが簡単ではないのです。さらに、ご乱心に遭遇したとき、社員の力は無力で、せいぜい

「まずいことになりましたね。この会社は大丈夫でしょうか?」

と、職場周辺の居酒屋あたりで上司や同僚たちと文句を言うくらい。ただ、文句を言う時間は有意義ではありません。それより、ご乱心が実行されたときに、自分の身に降りかかることをイメージしてみましょう。たとえば、当方が遭遇したダイエーグループ傘下入り。

・ダイエー社の店舗に移動になるかもしれない

・流通業界でダイエー社以外と仕事がしにくくなる

といったことが想定できました。なぜそれが必要かというと、自分の身に降りかかることを具体的にイメージしたとき、会社員が持っている貴重な権利を行使することになるかもしれないからです。権利とは、つまり「会社を辞めること」。ご乱心が実行されたときには、大きな変化が訪れるのは明らかです。組織の大きな混乱や、対立などに巻き込まれる可能性もあります。そうなると、本当は辞めたくても

「自分が辞めたら周囲に迷惑をかけるから、時間をかける必要がある」

とタイミングを逃してしまうかもしれません。取材した、医療商社に勤務していたDさんは、オーナー社長が成功は不可能としか思えない新規事業への大型投資を決断したとき、

《明らかにご乱心。会社が傾く可能性が大きいから転職しよう》

と決断して製薬業界へ転職しました。前職となった会社は、投資した新規事業が失敗して、オーナー社長は引責辞任。会社は赤字に転落。採用は抑制されて、社内は人手不足。きっと転職したくても、

「自分だけ一抜けするのが許されない状況。辞めるタイミングを逃がした」

と痛感したことでしょう。ご乱心で会社がグチャグチャになるのが明らかであれば、その前に辞めるのが得策です。

次ページご乱心の背景を考えると、成否が見えてくる
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