細川元首相、「最後のご奉公」 世論結託型の強力新型野党勢力結集へ

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東京都知事選は、自民党、公明党などが担ぐ舛添元厚労相と、小泉元首相との連携を武器とする細川元首相の戦いという様相となってきた。
 多彩な女性関係の舛添氏の家族の問題や、細川氏の首相辞任時の金銭疑惑の古傷も蒸し返され、話題は尽きない。

それにしても、20年前の首相が議員辞職から約16年の「政治空白」を経て登場したのには驚いた人も多かったに違いない。細川氏の主張の柱は「原発ゼロ実現」で、いまや「脱原発」の最大のオピニオン・リーダーである小泉氏との二人三脚が頼みの綱である。

だが、細川氏のもくろみはそれだけなのか。もしかすると、民主党の壊滅的衰退と「自民1強」体制の再現という政治の現状を見て、76歳のいま、日本の議会制民主主義と政党政治の再生のために「最後のご奉公」を、という気になったのかもしれない。

細川氏は「自民1強」打破のために2度、身を捨てて決起した過去がある。1990年代前半に日本新党を旗揚げし、政権交代を実現して非自民連立政権の首相となった。98年には自民党と並ぶ2大政党を目指して民主党の第2次結党の立役者の役割を果たした。

なのに、民主党政権の崩壊で、14年後に「与党1強」対「弱体野党」という状況になった。それを突き崩すには、世論との結託を目指すしか道はないが、小泉氏が「脱原発」を叫んでいるのを見て、このやり方で「世論結託型の強力新型野党勢力」をつくり出せると見たのではないか。「最後のご奉公」が究極の目的だとすると、「脱原発」を軸に強力新型野党勢力結集の牽引役となるのが都知事選出馬の隠れた狙いということになる。

細川氏の3度目の実験は成功するかどうか。著書『不東庵日常』に「大輪の打ち上げ花火みたいにドーンと思い切りよくいこう」と自身の生き方を語っている。
 都知事選の帰趨は読めないが、もし細川知事誕生となっても、94年の早期首相辞任、98年の議員辞職のように、役割完了と判断すれば、今度も勝手に任期途中でさっさと姿を消す可能性がある。

(写真:Natsuki Sakai/アフロ )

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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