1年の計は元旦にあり。
「おおむね好調」で2年目を迎えた安倍首相は14年をどう展望したのか。1月1日付で発表した「年頭所感」では、憲法改正の議論や安全保障政策の充実、教育再生を今年の重要テーマと位置づけている。就任以来、最優先課題としてきた脱デフレ、景気回復は後退、レベルダウンというのが首相の本音なのか。
消費税率引き上げとアベノミクスの仕上げが重なる今年は経済再生の正念場のはずだが、13年暮れの特定秘密保護法案の強行成立、靖国神社参拝を見てもわかるように、「14年の計」は持論の「戦後レジームからの脱却」を目指す「安倍路線」への挑戦と見て間違いないようだ。
首相は「年頭所感」で「『強い日本』を取り戻す戦いは始まったばかり」と強調した。「領土・領海・領空は断固として守り抜く」という決意の「強い外交」、脱デフレで取り戻す「強い経済」と、「強い」のオンパレードだ。「強さ」願望は尋常ではない。
著書『新しい国へ―美しい国へ 完全版』で「つねに『闘う政治家』でありたい」と書き、何と闘うのかという点について、「戦後の歴史から、日本という国を日本国民の手に取り戻す戦い」と明言している。確かに「強い日本」「強い外交」「強い経済」を望む国民も多いに違いない。
だが、「強い経済」には異論はないにしても、「優しい日本」「穏やかな外交」のほうが結局は国益と国民の福利につながるという反論は根強い。百歩譲って「強い日本」「強い外交」を企図する場合も、「理念派・強硬路線・猛進型」という「安倍流」ではなく、「現実派・対話路線・じっくり型」のほうが、長い目で見れば、効果的だろう。
「2度目の政権」の安倍首相は、突撃タイプという弱点を自覚し、長期戦略と複眼思考、民意に沿って路線修正を容認する柔軟さがなければ、「腰高の高転び」で墜落する危険性も大きい。衆参の選挙だけでなく、自民党総裁選もない「無選挙の14年」は、「無風政局」で政権安泰という見方が一般的だが、無選挙でも無風とは限らない。
思いがけずに襲った突風が暴風を呼ぶ展開となれば、いつものように、「その先は闇」である。
(撮影:尾形文繁)
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