AIの導入で「美術館」がこんなにも変わる理由

意外と多い絵画の「贋作流通」はAIで防げるか

美術館は、歴史上の特権階級に属する人々が好んだもののアーカイブという側面を持つ。そこからオブジェクトを選び出し文脈を付与するキュレーターや美術史家なども、高度な教育にアクセスでき、激しい競争を潜り抜けた、ある種の特権階級と言える。これまでの「美術史」とは、彼らのフィルターを通して語られる「物語」のひとつにしかすぎなかった。

サミットの会場となったクリスティーズでは、AIを用いたアート作品も展示された(写真:美術手帖)

サミットの参加者からは繰り返し、AIを利用し「いままでのバイアスを取り払う」、「新しいナラティブを見出す」といった言葉が出た。これは、従来の「物語」に限界が見えはじめていることの裏返しでもある。

人種やジェンダーに関する議論が活発に行われているいま、こうした動きが出るのは自然な流れだろう。美術館におけるAIの採用は、技術革新の必要性よりも、変化への渇望が後押しをしていように感じられた。

AIが美術界を改革する

AIを活用したソリューションを美術館に提供するスタートアップCuseum社のCEO、ブレンダン・シエコは、「美術業界はITリテラシー向上の途上にある。プログラミング能力は必須にはならないかもしれないが、今後はプログラミングができる人々が、よりよいキュレーター、コンサバター、ディレクターとしての役割を務めていくことになるだろう」と語った。

これまでの枠にとらわれない考え方でヴィジョンを描ける人々が、業界内で求められており、AIの浸透とともに、大きな変化が訪れることを強く予感させるサミットであった。

(文=國上直子)

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