日本には政府から独立した政策変革案が必要だ 駒崎弘樹「日本の親子を幸せにする」

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けれど、先ほど申し上げたように、これはサブスクリプションではないので、継続的な課題や事業の原資には、しにくいという課題があります。加えて、クラウドファンディングはクレディビリティー(信用)を消費してドネーションを受けるという仕組みですから、例えば2カ月に1回といった頻度では続けられません。

本当にほかに手段がないとき、年に1度ここでお願いするというような使い方をしないと、「またかよ」となってしまい、見向きもされなくなります。つまり、無尽蔵ではありません。そのため、継続的に事業運営するためのランニングコストにするには不向きです。

ですから、それはやはり寄付会員を募って、会員向けの講演や報告会を行ってその輪を広げていき、会費コミュニティーを形成していくことが重要で、寄付はクラウドとコミュニティー形成の組み合わせ戦略でないと厳しいと考えています。会費コミュニティーに関しては、まだ伸びしろはあると思っています。

船橋:そこは間違いないですね。

駒崎:間違いないと思います。海外のNPOは寄付を非常にうまく集めています。例えば、「国境なき医師団」です。「国境なき医師団日本」は日本で医療活動はしていませんが、年間80億円の寄付を集めています。そのうち、かなりの割合をマーケティング料に使っていますが、数億円単位で広告費を投入しても、数十億円のドネーションが集まれば投資としては成功です。

そういう戦い方を日本のNPOはこれまで全然してきませんでした。爪に火を灯すようなやりかたがよしとされる倫理観が蔓延し、広告費にお金を出すなんてとんでもない、となっていたんです。

船橋:どうしてもわれわれ日本人は、「清く、美しく、貧しく」になりがちですよね。

駒崎:それがわれわれの乗り超えなくてはならないメンタルモデルだと考え、例えば、広告に100万円使って寄付が1000万円集まり、それでより多くの人を助けられるのなら、それはいいことにしないといけないと、自らの心に刻んでいます。

ライフワークは「日本の親子を幸せにする」

船橋:最後に伺いたいのですが、駒崎さんは、今世紀に入って日本の社会が直面している最も切実な課題として、保育の問題に没頭されてこられたわけですが、それを踏まえ、これからの課題をどのように捉え、どこにフォーカスしていかれるのでしょう。

駒崎:ぼくのライフワークは「日本の親子を幸せにする」ことだと考えているので、やはり親子の問題です。例えば近年、問題になっている児童虐待の問題は、どう考えても人災です。子どもを守る、あるいは親に虐待させないで食い止めるための支援の仕組みが欠落していることが根本的な問題です。そこに国や自治体といった公共が予算をかけてこなかったことへの、報いを受けているという状況があるわけです。

日本は諸外国と比較して、子どもや親子の問題に国家予算が占める割合が非常に小さいという現実もあります。投資してないのですから、リターンがないのは当たり前です。そういう意味で、児童虐待という個別具体的なミクロの課題を解決しつつ、全体的に親子の課題に予算を投入するように政府の予算構造を変えていかなければ、この国の未来はないと思います。

人口減で、今後、日本の社会は縮小していくだけなのですから、未来世代にきちんと投資する日本にしていく。それが、親子の課題を解決していくっていうことにつながっていかなければならないと思います。

船橋:教育費にしても、児童手当にしても、科学技術の研究開発費にしても、OECD諸国の中でも非常に低い現状をみると、日本の予算はいったいどこに行っているのかと、思いますね。

船橋 洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

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ふなばし よういち / Yoichi Funabashi

1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱えるさまざまな問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年 文藝春秋)『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年 朝日新聞社) など。

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