日本には政府から独立した政策変革案が必要だ 駒崎弘樹「日本の親子を幸せにする」

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駒崎:ぼくの活動は、この「社会運動家」「社会起業家」「政策起業家」というそれぞれの側面を、場面によって使い分けているという感じだと思います。3者はかなりオーバーラップする部分もあるし、連続した考え方だし、ある種のツールだと思っています。ご指摘のとおり、かつて水俣病のようなプロテストとしての運動がありました。

仮にこれを「社会運動1.0」とすると、次に出てきたのが有機農業とかエコロジーといったライフスタイル系の運動でした。これが「社会運動2.0」です。その流れで考えると、現在は「社会運動3.0」の時代だと思っています。

今は、インターネットを駆使して、SNSで意見を表明したり、ネット署名を集めたり、クラウドで資金を獲得したりと、個人がツールを獲得してさまざまな空中戦を戦えるようになり、手法が大きく変化しています。

例えば、「保育園落ちた、日本死ね」という1人の女性の叫びが社会に反響を及ぼし、それが国会で取り上げられ安倍総理がうまくレスポンスできずに、抗議のデモを引き起こすということになりました。実はそれで終わりではなく、「日本死ね」のアジテーションは保育士の賃金アップにつながりました。1つのブログが政策を変えるというダイナミズムがあるのが今日的な「社会運動3.0」なのです。

ネットから大衆の声を「見える化」

このように、インターネット上でいったんバズ(爆発的な拡散)を起こせば、そこにマスメディアが飛びついてきてムーブメントを起こすことができる時代です。ですから、われわれも、そうしたツールや状況を効果的に使って、ムーブメントを作ることが新しいテーマになってきています。ネット署名やクラウドは社会インフラになりつつあります。

船橋:具体的な事例を挙げていただけますか。

駒崎:はい。3年ほど前ですが、フローレンスで「ひとり親を救え!プロジェクト」を実施したときには、1カ月ちょっとで数万の署名を集めて官房長官に届けました。当時、ひとり親の児童扶養手当は第1子が最大4万2000円でしたが、2人目になるといきなり5000円、3人目は3000円と、「値下がり幅」が異常でした。それがひとり親の貧困につながっていると問題提起して、ネットで署名を集めたんです。

結果、2人目が10000円、3人目が6000円に引き上げられるという政策転換につながりました。もちろん、4万2000円とはほど遠いのですが、確か、36年ぶりの増額でした。それほど、財務省の財布のひもが固かったということですが、それを押し返すことができたのは、大衆の声を「見える化」して、為政者に届けられたからだと思います。

「見える化」までのコストは、以前は非常に高かったわけですが、ネットを活用すると、ほとんどコストはかかりません。大衆の声を政治や政策に届けるまでの回路をショートカットできるようになったのは、大きなことだと思います。

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