日本には政府から独立した政策変革案が必要だ 駒崎弘樹「日本の親子を幸せにする」

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ご指摘のとおり、日本では業界と与党族議員の癒着や汚職の歴史もあり、ロビーイングにはダーティーなイメージが付きまといます。

船橋 洋一(ふなばし よういち)/1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱える様々な問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年 文藝春秋)『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年 朝日新聞社) など(撮影:今井康一)

そこはアメリカも同じです。アメリカ国民のワシントンに対する反感はロビイストが議会を動かしているのではないかという不信感が根差しています。ただ、アメリカでは憲法が請願権でロビーイングの権利を保障しており、国民の政治参画の重要なチャネルでもあるのです。

選挙で投票するだけで、意思を表明し責任も果たしたというのではなく、具体的な問題が起こっている現場から、誰かが日々の問題を政策課題としてまとめ上げて、政策立案の現場へ流し込み働きかけ、場合によっては政治家にも働きかけるといったことは重要です。「それはお役所がやるものだろう。そのためにわれわれは税金を払っているのだから」ということでは不十分だと思います。

日本の場合、役所の現場をつかむ把握力が弱まっているし、行政サービスのスピードが遅すぎるし、デジタル化によるガバナンス・イノベーションへの意思が希薄だし、市民への情報開示とデータ提供が未熟です。となると、シンクタンクやNPOや大学などが政策起業家を育て、政策コミュニティーをつくり、政府とは独立した立場から政策のイノベーションを進めることが求められていると思います。

駒崎:そのとおりだと思います。ぼくが、とくにNPOや市民セクターに言いたいのは、悪しき潔癖主義をやめようということです。市民セクターの方々は「政治と宗教には関わりません、だからクリーンです」と言いますが、いや、クリーンだけど無力じゃないかと思ってしまいます。政治でも宗教でも、それで人々を助けられるのなら協力すればいい。その泥沼に突っ込んでいけばいいと思います。

それぐらいやってこそ、世を助けるということだと思います。ですから、ぼくは公明党とも深くお付き合いさせていただいているし、聖教新聞でコラムも書いています。正直申し上げると、最初は少し怖いと思っていましたが、付き合ってみると、当たり前ですが普通の方々です。学ぶこともたくさんありました。

「社会運動3.0」――ネットを駆使して社会を変革する

船橋:かつては市民運動が、日本の政治に少なからず影響を及ぼしてきましたね。運動によって社会問題を解決する。これが市民運動でした。

例えば、水俣病の問題では成果を上げました。しかし、おっしゃるとおり、市民運動には潔癖すぎるところがあったように思います。妥協をよしとせず、一揆型というか玉砕型というか、問題を提起したこと自体に意義があるという意識が強く、当事者として妥協するところは妥協して、解決に向け1歩でも前に進むという姿勢を欠いていました。

一方、近年では、駒崎さんたちのような社会的企業が事業によって、あるいは政策起業家として政策に参画することで、社会の課題を解決しようとしています。市民運動と社会的企業にはオーバーラップするところもあると思いますが、駒崎さんはどのようにお考えですか。

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