船橋:駒崎さんご自身も育休を取られたそうですね。
駒崎:2カ月の育休を2回取りました。
船橋:その間の経営はどうしたんですか。
駒崎:基本的にはスタッフに任せていました。1日1時間ちょっと、オンライン会議に出席して指示したり、メールの確認くらいはしていましたけど。
船橋:このフローレンス方式は、ほかのNPOなどにも広がっているんですか。
駒崎:ぼくが創設した「新公益連盟」という社会起業家のネットワークがあります。そこでの調査ですが、最近の社会的企業の給与水準は中小企業に近くなってきています。一方、働き方は断然、働きやすい環境にあります。それで、労働市場での競争力を高めているというデータがあります。先ほども申し上げたように、人材面やカルチャーの面でスタートアップ企業にすごく近いんです。
スターバックスでマックを広げて仕事をしていてもまったく問題ないとか、そういうカルチャーです。スタートアップ企業でも最近は「社会的意義」を強調するようになっていますしね。われわれの存在意義が侵食され始めているとも、競合し始めているとも言えます。それが、大企業との明確に差別化できるところです。
クラウドファンディングと会費――NPOの資金調達
船橋:資金面でのご苦労もあると思います。駒崎さんのところは、事業収入のほかに、会費や寄付といったファンドも募らないとならないと思いますが、ファンドレイジングは「汚いお金」をもらったと言われると、信用が大きく傷つく危険性と隣り合わせです。その辺りは、どのような方針でどのように心砕いておられますか。
駒崎:日本の政治、政策風土として、霞が関に対抗できるシンクタンクを作るというとき、それを持続可能なものとするには、資金調達が最も大きな問題だという船橋さんの問題提起には、まったく同感です。
フローレンスの場合は、約8割が事業収入で、残りが寄付とその他です。売り上げは26億円ほどで、寄付は年度によって上下しますが2億円程度です。寄付には、さまざまな社会的課題の解決のためにクラウドファンディングを利用して寄付をお願いするワンショット型の寄付と、寄付会員を募り会費のような形で毎月少額の寄付を頂くサブスクリプション型の寄付があります。後者のほうは積みあがってくるので安定した資金となります。
船橋:クラウドファンディングはある種のイノベーションだと思いますが、課題はありますか。
駒崎:クラウドファンディングは、僕がNPOを立ち上げた2003年には存在しませんでした。ですから、助成金の申請書を20通ほど書いて、ようやく700万円の開業資金を集めました。ですから、そのときにあれば、どんなに助かっただろうと思います。
今、700万円なら、目の前の子どもを助けたいというような趣旨であれば、2週間もあれば集まると思います。資金調達が容易になったという意味では、イノベーションだと評価しています。
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