船橋:シンクタンクを運営して感じることは、資金調達も大変なのですが、それよりもこれはという人材の確保の難しさですね。ご著書を読んでいて面白いなと思ったんですが、日本のNPOは以前、「さんちゃん産業」だと言われていたけれど、それがいま、変わってきていると……。
駒崎:農家と同じで、担い手が「あんちゃん」「じっちゃん」「ばあちゃん」だったという意味ですが、今はNPO業界がソーシャルビジネス化してきたことによって、どちらかというと、スタートアップ企業とカルチャーが近くなっているという状況はあります。
人材も交じり合うようになってきているので、かつての市民運動のように、左翼の人が有機農業をしているといったイメージとはかけ離れてきています。それは、ある種のシビルセクターというか、ソーシャルセクターの多様化と新しい勢力の勃興という意味では、いいことだと思っています。
船橋:私どものシンクタンクの場合、主な人材供給源は「リターン」「インターン」「オン・ローン」といったところでしょうか。
海外で教育を受け、日本に帰ってきたが、思い描いていたパブリックに関わる仕事場が見つからず、とりあえずシンクタンクで働いてみるかとか、大学で学ぶだけでは物足りない、インターンで一足先に社会に触れ、できれば政策に関わるリサーチをしてみるかとか、政府や政府系機関、さらには企業から出向で働いていただくとか、そうした人材が活躍してくれています。政府・政府系は、自衛隊と国際協力銀行(JBIC)です。
ところで、最近は、社会起業家を目指し、第2、第3の駒崎弘樹になりたいという若者たちが増えていますが、駒崎さんのところでは、どんなバックグラウンドの人たちが一緒に働いているのか、あるいは、どのような人材を求め、どのような求人活動をしているのでしょうか。
「働きがい」と「働きやすさ」
駒崎:ぼくが起業した2003年頃は、ベンチャーの人たちより怪しい感じで、俺が社会を変えてやるという野武士のような人ばかりでした。しかしこの5年くらいの間に、良しあしはわかりませんが、結構普通の人が集まるようになりました。
最近は、普通に大企業や企業の研究所から転職してきたり、中央官庁を退職して来た人もいたりします。普通に、就職や転職の選択肢の1つとして選んでもらっている気がします。
そういう意味では、名刺を渡すと、「NPO?、『んぽ』って何ですか?」なんて言われていた時代からは考えられないほど認知度は上がったと思います。10年ひと昔です。
志望動機を聞くと、「働きがい」と「働きやすさ」の2つの軸があるように思います。働きがいは、明確に社会のためによいことをしていることがわかるから、という理由が多いです。自分の仕事に意味や意義を求める人ですね。
もう1つは、例えば、大企業で働いていたけれど、育休を取ったら降格されたとか、働き方が窮屈で子育てに十分な時間がとれないとかの理由で、働きやすさを求める人ですね。大企業でバリバリ働き安定を手に入れるのもいいけど、それよりもっと人間的な生活をしたい、という欲求です。フローレンスは男女問わず時短もできますし、時短の女性管理職もいて、フレキシブルな働き方ができます。
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