日本には政府から独立した政策変革案が必要だ 駒崎弘樹「日本の親子を幸せにする」

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ぼくがイメージしているのは、まさに、船橋さんが提示された「政策起業」という概念です。ぼくは社会的企業を運営し、ソーシャルイノベーションを起こしてきたと自負していますが、その小さなソーシャルイノベーションを大きなスケールに育てていくためには、やはり行政が介入する制度化が必須だと思います。

駒崎弘樹(こまざき ひろき)/1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」と考え、2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする(撮影:今井康一)

つまり、事業を通して社会的課題に対して解決策を提示する。なおかつ、それを制度化する支援までを行わなければ、ソーシャルイノベーションを全体に広げることはできません。

ぼくはその両方をやってきましたが、その仕事は「社会起業家」という概念だけでは表現できず、もう1つ、新しい概念を作ったほうがよいと考えていたところでした。

船橋さんの掲げる「政策起業家」という概念が、社会起業家が事業を通して課題解決の仕組みを提示し実践する人を意味するなら、それを制度化するために活動するのが「政策起業家」になるのだと思います。

社会起業家は事業を通じて目の前の人を助けるのに対し、政策起業家はそれを制度化することでより多くの人を助けるというイメージでしょうか。それができるのがNPOのメリットです。

「リスク」に対する共通理解を社会でつくるべき

そのような形で、それまで社会の仕組みになかったイノベーションを政策に取り込んでもらうには、ロビーイングが必須です。ある種のリスクテイクも覚悟し、いろいろな戦いをしながら、よりよいと信じる制度設計を目指します。

政策起業家という言葉を知る前は、ぼくはずっと「草の根ロビーイング」と言っていましたが、いくら「草の根」という冠を載せても、やはりロビーイングには汚いイメージがあって、しっくりこないと思っていました。ですから、「政策起業家」という言葉は、ぼくたちの活動の一部分を表現するのにぴったりでありがたいと思いました。

船橋:いま、ロビーイングとリスクテイクということを言われましたが、非常に大切なことだと思います。日本はどこもリスクをとらない社会になってしまっています。政治家も行政もメディアも国民の「安心」ばかりを声高に唱え、リスクについては極力触れないようにする風潮が強まってきたように思います。

しかし、社会が「受容できるリスク」に対する共通理解をつくらないことには、イノベーションも危機管理も、安全保障もできません。政策起業も難しい。政策を実現していくためには、法案であったり規制であったり、政治や行政と関わらざるをえません。が、政治と関わると、そこには当然リスクもありますね。いろんな政治家がいますし、政治の落とし穴もありますから。

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