三井不動産が「賃貸ラボ」を本格展開する理由 スタートアップ支援に新しい手法
マンションやオフィスのように、「実験室」を賃貸する。そんな取り組みが始まっている。
三井不動産は5月、新規事業として「賃貸ラボ&オフィス」の立ち上げを発表した。薬品や装置を用いた実験を行うラボと、デスクワークを行うオフィスが一体になった施設だ。
アメリカでは立派な「不動産」
実験に用いる機材や備品はテナントが持ちこむが、給排水や給排気といった設備は通常のラボ仕様に整備する。細菌やウイルス、病原体などを用いた実験も一定程度できる「バイオセーフティレベル2」にも対応する。
すでに都内2カ所で開発が動き出している。湾岸エリアの新木場では約2300坪の6階建てラボの建設が進むほか、江戸川区では第一三共が保有する研究所の一部を三井不動産が外部に貸し出す。遊休不動産ならぬ遊休ラボの活用も進みそうだ。
こうした賃貸はレンタルラボとも呼ばれ、すでに一部の大学が月貸しを行っている。だが、大学との共同研究や産学連携を利用の条件に据えている場合が多く、民間企業にとっては使い勝手があまりよくなかった。
このほか、民間企業主導の賃貸ラボでは、武田薬品工業が2018年に神奈川県藤沢市の湘南研究所を開放する形で「湘南アイパーク」をオープンした。ほかにも茨城県つくば市の「つくば研究支援センター」や、兵庫県神戸市にある「神戸医療産業都市」などでも、自治体主導で民間企業にラボを貸している。ただ、これまで都心近郊にはこういったラボが少なかった。
アメリカでは「ラボ&オフィスは300万坪を超える」(三井不動産の三枝寛・ライフサイエンス・イノベーション推進部長)など、ラボは立派な「不動産」としての地位を確立している。ボストンやシアトルなどでは専門のデベロッパーが大規模開発を進めており、一部では大学キャンパス内の研究室を運用する企業もある。投資物件としても認知され、ラボ専門のREIT(不動産投資信託)も組成されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら