確かに、企業の採用手法を変更させることで学業へのモチベーションを高める方法では、アカデミックな興味ではなく、功利的な目的で動く学生を増やしてしまうのではないかという危惧も、わからなくはありません。
しかし、私は、それでいいと考えています。
私は大学を卒業後、民間の会社で仕事をしてきました。当然ですが、仕事をすることで給料をもらい、生計を立てています。しかし、生計を立てるためだけに仕事をしているわけではありません。
自分の仕事を通じて社会へ貢献できれば、非常にうれしく感じます。また、今の仕事をすることが、将来の自分のキャリアに役に立つと考えることもあります。このように、私はいわゆる「やりがい」を持って、働いてきました。多くの方も、きっとそうだろうと思います。
しかし、仕事を一生懸命してもしなくても給料はまったく変わらないという状況、あるいはなるべく本業の仕事は短い時間で終わらせ、よそでアルバイトをしたほうが、家計が楽になるというような状態であれば、仕事を頑張ることはできなかったと思います。
私に限らず、多くの人は、そのような状況の中で、やりがいを持って頑張ることはできないのではないでしょうか。また、社員がそのような気持ちであれば、上司がどんな指導をしても効果はないと思います。
会社では、人事制度などを通じて「成果を上げた人が評価される」「頑張った人が評価される」という基盤を整備しています。そのうえで、「仕事の意味・意義」「仕事を通じて得ることができるもの」などを同時に伝えているはずです。
大学生の過半を占める文系学生の多くは、民間企業に就職します。そして、大学の成績が就職に関係がないばかりか、場合によっては、学業をおろそかにしてサークルやアルバイトに力を入れている人のほうが、就職活動をうまく切り抜けられるという社会の仕組みが、厳然とあるのです。そんな状況の中で、大学の学業に力を入れることができないからといって、それを責めることは誰にもできないのではないでしょうか?
重要なことは、大学生が大学での学業に力を入れることが報われる社会環境を、まず整えることです。それを整えたうえで初めて、就職のためだけではない、「学ぶ意味・意義」を伝えられるのではないかと考えています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら