実は、ワインの本場であるヨーロッパへ品種名を記載したワインを輸出するには、そのブドウ品種名が国際ブドウ・ブドウ酒機構(O.I.V.)のリストに掲載されていなければなりません。つまり、リストにないブドウ品種は、ボトルに品種名を記載できないのです。
こうした中、甲州は日本固有の品種として初めて、2010年にリストに掲載されました。続いて2013年にマスカット・ベーリーAも掲載され、この2品種がラベルにも品種名が記載可能な、日本を代表するブドウ品種となったというわけです。これは日本固有のブドウによるワインが世界に認められた一つの結果であり、多くの方の尽力により成し得た大きな成果といえるでしょう。
世界進出のきっかけを作ったワイン
ちなみに、甲州の世界的な評価を上げる大きなきっかけとなったワインの1つに、シャトー・メルシャンの「甲州きいろ香」が挙げられます。シャトー・メルシャンは元祖日本のワイナリーともいえるのですが、コンビニなどでも気軽なワインが買えるので、なんとなく安くてカジュアルなワインだけを造っているイメージを持っていませんか?
先日取材に伺いましたが、シャトー・メルシャンは世界的にも有数のワイン研究実績や栽培・醸造技術を持った会社で、日本を代表するワインメーカーです。それまで甲州の評価は、香りが少ないとか個性がないと言われることが多かったのですが、その研究力・技術力により、甲州がもつポテンシャルを引き出すために最適な畑の場所や栽培方法、収穫時期などが見直され、その結果、2005年に「甲州きいろ香」が生まれました。このワインは、アロマに富んだ甲州ワインとして世界的にも評価されています。
もう1つ、日本ワイン世界進出の大きなきっかけを作ったといえるのが、中央葡萄酒の「キュヴェ三澤 明野甲州」です。このワインが、2014年、世界的にも権威のあるイギリスの国際ワインコンクールである、デキャンター・ワールド・ワイン・アワードで日本ワイン初の金賞を獲得するという快挙を成し遂げました。このことはワインの世界に甲州の存在を知らしめただけではなく、日本の生産者の方にとっても大きなニュースとなりました。
これまでは、こうした大きなワインメーカーが甲州ワインを牽引してきましたが、今日では小規模でブドウ栽培からワイン造りまでを行う、ブルゴーニュのドメーヌのような生産者も増加中です。日本の造り手の中には、フランスをはじめヨーロッパのワイナリーで学んだ方も多く、日本ワインはますます世界で注目され始めています。
昨年、ボルドーにある世界最大のワイン博物館と呼ばれるシテ・デュ・ヴァンで行われたワインイベントでも、甲州ワインのシンポジウムがあり、甲州ブドウの権威である酒類総合研究所の後藤奈美さんと共にパネリストとして、ヨーロッパの方々に甲州ワインの魅力を伝える機会がありました。みなさん非常に興味津々で、テイスティングセッションも大変盛り上がりました。
甲州の実はやや薄い藤紫色で艶やか。一般的には甲州ワインは、味わいにあまりとがったところがなく、すっきりとした爽やかさが特徴です。優しい味わいの日本の家庭料理にとくに合わせやすいワインといえます。さすが日本ワインですね! 今ではさまざまなタイプも造られていて、飲み比べも楽しいのですが、私が今回ぜひご紹介したいワインはこちらです。
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