地銀支店長が後継難の酒造会社に転身した事情 地銀「人材紹介・育成」は新しい事業価値に

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こうした地銀のコンサルティング機能の実効性を高めるツールとして注目を浴びているのが人材紹介ビジネスだ。2018年3月に改正された地域金融機関向けの監督指針に、銀行の付随業務として、それまでのコンサルティング業務、ビジネスマッチング業務、M&A業務に加え人材紹介業務が明記された。

取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化策の1つとして、人材紹介を戦略的に活用すること、そして地元の中小企業が抱える後継者問題、そして人手不足の解決が期待されている。

この監督指針の改正を機に地銀が人材紹介業に参入する動きが相次いでいる。多いのが、全国展開する既存の人材紹介業者と提携するパターンだ。全国から転職希望者を募り、人材不足に悩む企業の求人ニーズをいちはやくつかむ地銀が転職先をマッチングする相互補完の構図だ。

社長の「右腕人材」体系的に育成、取引先へ紹介

企業価値向上を見据えた経営アドバイスの一環としての人材紹介ビジネスならば、労働力としての人材よりむしろ社長の「右腕人材」が文脈に合う。事業承継問題に絡めれば、将来の後継者含みで社長の右腕人材を紹介することだ。

むろん、社長の右腕となって舵取りを補佐するほどの能力をもつ人材は地元にどれほどいるのか、といった課題はある。そこで自行の行員を紹介することが1つの選択肢としてあるだろう。後継者難に悩む地元の中小企業に、将来の後継者含みで転籍するキャリアプランを確立することだ。

町田酒造やまるほん旅館の事例は、銀行員の「経営者としての潜在力」を示している。ただし、これらは情熱をもった銀行員が顧客を思うあまりに自らの意思で後継者になった、いわば個人的な事例だ。この事例をひな形に、銀行の取引先支援の一環として右腕人材の紹介モデルを講じることが必要だ。

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