日本の消費税の議論はなぜ「こんなに的外れ」か 消費増税の前に「最低賃金5%アップ」せよ
このときは、第二次安倍晋三政権で実施されたアベノミクスが奏功し、過度な円高が是正され、株価も順調に上昇し、企業の業績も好調でしたが、給料の伸びが1%台でしたので、過去もっとも重い負担となっていました。
海外では、消費税の負担は次第に重くされてきましたが、それ以上に給料水準が増えています。対照的に、日本では、長年にわたって給料は低空飛行のままで、給料以上に消費税が引き上げられたため、多くの日本人にとって消費税が重い負担となってしまったのです。
日本人の消費税負担が、欧州諸国に比べるとかなり少ないのは事実です。しかし、それは消費税率が低いからだけではありません。日本人の消費税負担が少ないのは、給料が異常に安いからです。
とくに、低所得者の負担がどの程度なのかは、最低賃金を比較するとわかりやすいです。
日本人の生産性は、例えばイギリス人とそれほど大きくは変わりません。しかし、最低賃金を購買力調整して比較すると、日本の最低賃金はイギリスの約7割程度なのがわかります。これがいかにおかしいかは、子どもでもわかるでしょう。
消費税のかからない非課税対象を無視しても、仮に消費税率が15%の場合、給料が100だとすると、残りの85が実際に使える所得になります 。
しかし、日本の最低賃金はイギリスの7割程度しかありません。イギリスの給料が100なのに対し、日本ではわずか70しかもらえていないのです。そこに10%の消費税がかかれば、残るのは63です。これでは反対の声が上がってもしかたがないでしょう。
端的に言えば、適切な給料をもらっている人から15%の消費税をとるのと、給料が異様に安い人に8%・10%の課税をするのとでは、意味が違うのです。
海外では、生活必需品は基本的に消費税適用の対象外で、非課税にしている国が多いので、消費税を引き上げても貧困層の負担が重くなることはありません。
しかし、日本ではいまだに生活必需品も消費税の課税対象です。今年予定されている10%への引き上げ時には、軽減税率を採用するなど、さまざまな対策が打たれるようですが、生活必需品がすべて非課税になるわけではありません。
消費税増税の「負担者」は誰か
給料が上がらないまま、消費税率が上がってしまうと、個人の負担が非常に重くなります。つまり、消費税率を上げて賄おうとしている社会保障費などは、主に個人部門が負担して、企業は直接的には負担しないことになるのです。
ここ数年、最高益を更新する企業が多数あり、企業の内部留保金は未曽有の水準に達するほど、とどまりまくっています。そんな企業には負担をさせず、個人の負担ばかり増やすのでは、反発が高まるのも当然です。
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