日本の消費税の議論はなぜ「こんなに的外れ」か

消費増税の前に「最低賃金5%アップ」せよ

ですから、消費増税は必ずダメだという結論は幼稚です。消費税の2回の引き上げが悪影響を及ぼしたのは、実は人口と給料が減っていることが、その主因だからです。

となると、現実的な選択肢はもう1つあります。継続的な人口減少に対応するために、生産性を継続的に向上させることです。

いろいろなところですでに何度も説明していますが、GDPは人口増加要因と生産性向上要因によって増減します。日本は今後数十年にわたって人口が減少していくので、GDPを増やすには生産性を向上させるしかありません。給料を増やせば、人口が減っても可分所得は増えるし、税収も増えるはずです。消費税増税のマイナスの影響を吸収する力も働きます。

拙書『日本人の勝算』でも説明しましたが、生産性向上をさせるには、最低賃金を引き上げる政策が有効なことが実証されています。

日本では昨年まで最低賃金を年3%ずつ引き上げてきました。一方、今年は消費税が2%引き上げられます。最低賃金で働いている人が、給料全額を消費すると仮定すると、今年は賃金が増えた分の3分の2を政府に巻き上げられることになります。つまり、ほとんど賃金が上がらないことになってしまうのです。

ですので、消費税率を引き上げるのであれば、これまでの最低賃金の引き上げ率3%に、消費税率が上がる2%を上乗せして、今年の最低賃金の引き上げ率を5%にするべきです。こうすれば、去年並みの最低賃金の引き上げ幅も守られます。

消費税の上昇は生産性向上で吸収すればよいのです。引き上げ分を取られて損するのではなく、賃金が増える分だけ、より賢く働いて補えばよいのです。

偶然ではありますが、私の試算では、日本政府が毎年最低賃金を5%引き上げる政策を実行すれば、経済は1%成長するという結果が出ています。

「最低賃金5%アップは厳しい」という情けない反論

NHKの報道によると、5月14日の経済税制諮問会議で、サントリーホールディングスの新浪社長が、最低賃金の5%アップを提言されたそうです。それに応えて、菅官房長官は「日本の最低賃金は世界的に見て非常に低い」とコメントされました。

一方、世耕経産大臣は、「最低賃金の引き上げ率は、中小企業には現状の3%が精一杯です」とコメントをしたそうです。こういう発言をしなくてはいけないのは、経産大臣という立場を考えると理解できなくはありません。

しかし、経営者がこういった反論をするのは、理屈が通らないと思います。すべての中小企業の全従業員が最低賃金で働いているわけではないので、中小企業を十把一からげに扱って判断するのはいかがなものでしょうか。

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