日本の消費税の議論はなぜ「こんなに的外れ」か

消費増税の前に「最低賃金5%アップ」せよ

理由その5:企業負担にすると労働条件が悪化する

消費税率が上がったとしても、企業がその分を価格に転嫁しないことも十分にありえます。人口が増加している通常の経済ならば、個人消費が増えるので、価格に転嫁しなくても売り上げの増加によって吸収することが可能です。

しかし、人口が減っている日本の場合、価格に転嫁せずに、ほかに何も手を打たなければ、単純に利益が減ります。そこで、企業は非正規雇用者を増加させるなど、人件費を圧縮し、利益を確保しようとします。つまり、消費税率の引き上げは、労働者の労働条件を悪化させることにつながる可能性が高いのです。

理由その6:生産性が低いから社会保障負担が重い

そもそも、日本の社会保障制度が不健全な状態になっている根本的な理由は、消費税率が低いからではありません。

例えば、年金制度の例で見ると、世界では生産性の高い国ほど年金制度が健全であるという関係性を顕著に見て取ることができます。つまり、生産性と年金制度の健全性には、強い相関関係があるのです。

相関係数を持ち出すまでもなく、生産性が高ければ年金制度が健全化するのは、当たり前と言えば当たり前なので、この件に関しては誰でも理解できると思います。

ですから、福祉制度を充実させるために消費税を引き上げるのは、あまりにも視野の狭い、反射神経的な政策と言わざるをえません。

消費増税議論の根本は「生産性をどれだけ増やせるか」

これからますます負担が増える社会保障費をどうするかは、日本が直面している大きな課題です。高齢化によって社会保障負担は増える。しかし税収が足りない。単純に考えれば、国としての選択肢は以下の3つになります。

1:税収を増やす
2:年金を減らす
3:医療費の個人負担を増やす

ただ、反対論にあるように、税収を増やすと消費は減ります。年金を減らしても、消費は減ります。医療費の負担を増やしても、おそらく高齢者の消費が減るでしょう。

つまり、何をしても消費が減ってしまうのです。

確かに、エコノミストたちが言うように、GDPが横ばいの中で消費増税をすれば、いいことはないでしょう。となると、政府部門の需要を増やすべきという単純な考え方に落ち着きそうです。

しかし、この解釈には重要なミスがあって、本質をとらえていないと思います。これまでの消費税増税のマイナスは、人口、とりわけ生産性年齢人口という最大の消費者の数が減っているのに加えて、給料が上がらない中で、消費税を増税したことが原因です。

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