日本の消費税の議論はなぜ「こんなに的外れ」か 消費増税の前に「最低賃金5%アップ」せよ

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なぜ、こんなズレまくっている議論を真剣にしているのか。そもそも、なぜズレていること自体に気づかないのか。本当に不思議です。

上記の意見を考えると、その「ズレ」は明らかです。

第1の意見に関しては、2014年の消費増税は、確かに消費低迷の原因の1つかもしれません、しかし「主因」なのかと言われると大いに疑問です。徹底的な統計分析による検証が必要でしょう。

私は、平成元年の消費税導入は別として、それ以降の消費増税は、生産年齢人口が大きく減少する時期だったからこそ、経済への打撃が大きかったと考えています。主因はむしろ「生産年齢人口の減少」です。あいかわらず、エコノミストは内需と人口動態の深い関係を無視していると感じます。特にIMFよると、人口減少と高齢化によってデフレ圧力が増すというしっかりとした分析がなされています。

第2の意見は、日本経済のグローバル化が非常に進んでいるという誤解に基づいています。

過去数十年間、世界経済は大きく成長しているのに、日本経済は明らかにその恩恵を受けていません。なぜマイナスのときだけ影響を受けるのか、理屈が通りません。

そもそも、日本のGDPに対する輸出額は世界113位という低水準です。とてもグローバル化しているとは言えない状況です。確かに一部の上場企業はグローバル化していますが、それがイコール日本経済全体がグローバル化していることを意味しないのは当然でしょう。

第3の意見は、あたかも内需が税制で決まるかのように、経済を単純化しすぎていると思います。

例えば、2018年の人口動態を見ると、生産年齢人口が約100万人減少しました。これらの点を含めて分析すると、日本の個人消費が約2兆円減少したことになります。消費税だけで個人消費が低迷するとは、とても思えません。

毎年人口が減る日本で、財政を拡大して消費減少に対応するとなると、雪だるま的に拡大に拡大を重ねていく必要があります。単年度で考えればいい政策に聞こえるかもしれませんが、長期で考えると非常に危険な考え方です。

そもそも、上記の記事のスターティングポイントは、ある意味で「過去はどうだったか」ですので、私なりに過去を検証したいと思います。

実は私は、エコノミストたちより、一般の人たちのほうが消費税率引き上げの問題の本質、すなわち理不尽に自分たちに降りかかる負担の大きさを理解していると考えています。

まずは、今までなぜ消費増税が経済に悪影響を及ぼしてきたのかを考えたいと思います。

なぜ消費増税は悪影響を及ぼしたのか

理由その1:給料以上に税率が引き上げられた

過去の消費税増税が経済に悪影響を与えた最大の理由は、給料が増えないからです。

3%の消費税が導入された1989年4月、統計局の調査によると日本人の給与は平均して4.3%増加していました。もちろん消費税導入への抵抗はあったでしょうが、給料がそれ以上に上がっているので、内需がマイナスになることはありませんでした。

一方、消費税が2%引き上げられ、5%になった1997年は、給料は平均1%程度しか伸びていませんでした。当然、引き上げには強い抵抗がありましたし、実際の負担も重かったのです。

日本で前回消費税が引き上げられたのは、2014年4月です。5%だった消費税率が3%引き上げられ、8%になったのは、皆さんもご存じのとおりです。

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