横濱さんは、「『青葉区オジサン』はとくに大変だ」と考えている。80年代に人気を博したテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」の舞台になった田園都市線沿線の郊外タウンが集積する青葉区は典型的なセレブ自治体。一世帯の平均年収は日本でも指折りの高さというまさに「勝ち組」だらけの街だ。
高学歴、高収入のサラリーマンが多い土地柄だけに「会社人間」で「プライドが高い」という「3高」の人も多い。そのプライドが、新たな挑戦や地域とのつながり、仲間づくりの障害になりやすいと、横濱さんは考えている。しかも、住民の多くが、社会人になってからこの地に住み着いた人たちで、学生時代からの友人や親せきづきあい、地域とのつながりなど、地縁、血縁がほとんどない。夫が高収入とくれば、専業主婦が当たり前という土地柄。妻はお稽古、ママ友、近所づきあいと、四方八方に「つながり」を作り、日々忙しく、夫は気づけば「家」と「会社」以外に居場所はない、という状況になりがちだ。
その中でも、「『24時間働けます』と、働くことが男の務めとしてきた60~70代と、SNSを活用し、働き方改革だ、イクメンだ、何だと、プライベートや趣味なども充実して楽しげな40代以下の人たちとの狭間で揺れているのが50代」というのが横濱さんの見立てだ。これは青葉区だけの話でもないだろう。
50代の「自分探し」
男女問わず、会社員にとって、50代は「第2の思春期」と言えるのかもしれない。「社会」に出る前の自分探しに悩む学生時代の「第1の思春期」。「社会」に出たつもりで、実は「会社」という狭い世界に閉じ込められていたサラリーマンが、数十年を経て、再び「社会」に再デビューする前のこの時期に、再びの「自分探し」というわけだ。
そんな悩み深き旅人たちに、居心地のいい宿り木を。横濱さんのささやかな試みは、多くのオジサンたちの「まず一歩」となっている。心地の良いつながり、気負わない会話、人のぬくもり。ちょっとした出逢いときっかけ、後押ししてくれる誰かがいれば、人生はあっという間に変わる。それを実証する横濱さんの取り組みは「1人で生きていく時代の新たなコミュニティーづくりのカタチ」として示唆に富んでいる。
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