ただ、筆者は以前にも記したが国枝調教師の凱旋門賞に対する特別な思いも聞いている。ポツリと言った「オレもあと7年で調教師生活も終わりだよ。もうこんな馬には二度と巡り合えないよな……」との言葉は本音だろう。国枝調教師は改めて別の馬で凱旋門賞挑戦を目指すしかない。
ルメール騎手は違う馬で母国の凱旋門賞に騎乗する可能性が十分ある。それでも、天皇賞・春をフィエールマンで勝った後、レース後に凱旋門賞への可能性を聞かれた時に思わず「残念ながらアーモンドアイは回避しました」と語った。この「残念ながら」という言葉にルメール騎手の思いが込められていると筆者は考える。
アーモンドアイの凱旋門賞登録見送りに対してファンの反響は大きかった。強い馬の挑戦を見たい。それはファンの夢だろう。野球の二刀流で活躍する大谷翔平が世界最高峰のメジャーリーグでも二刀流で挑戦した。その姿にファンは夢を託した。かつてのイチローや松井秀喜、中田英寿、さらに今の大坂なおみや錦織圭、松山英樹らが世界のトップに挑む姿に心を揺さぶられた。
アーモンドアイは文句なく日本最強馬だ。だが、日本競馬の夢である凱旋門賞挑戦の機会はなくなってしまった。日本の競馬はファンの馬券の売り上げで成り立っている。数百億というビジネスに成長したノーザンファームにさまざまな事情があるのは承知のうえで、ファンの夢をかなえるためにも挑戦の機会を与えてほしかったと思う。
「アスリートファースト」の観点から見てもアーモンドアイがエネイブルに挑む機会がなかったことは個人的に残念である。今回の発表の経緯も含めてアーモンドアイという馬が競馬ファンにとって大きな存在だったという認識が少し欠けていたのではないか。陣営の意思疎通ができていなかったのではないか。筆者にはそんな気がしてならない。
令和初のダービーを制するのは?
令和初のダービーは凱旋門賞挑戦へ向けてサートゥルナーリアがどんな競馬を見せるのかが焦点になるだろう。旋風を巻き起こすオーストラリアのダミアン・レーン騎手(25)が騎乗停止中のルメール騎手に代わってサートゥルナーリアに騎乗する。その手綱さばきも見ものだ。
アーモンドアイはドバイターフ後もノーザンファーム天栄で乗り込まれ、5月10日に美浦トレセンに戻って順調に調整されている。安田記念には騎乗停止が明けるルメール騎手とのコンビで挑む。こちらは同世代の牡馬最強ダノンプレミアム(牡4、栗東・中内田充正厩舎)との初対決が楽しみだ。
今後はジェンティルドンナやウオッカのGⅠ通算7勝を超える牝馬最多、史上最多記録への挑戦が焦点になるだろう。春競馬のハイライトが迫っている。
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