秋の海外遠征の可能性は残っているが、日本競馬界の悲願でもある凱旋門賞制覇へ向けて、挑戦する機会自体がなくなってしまった。筆者の素直な感想としては残念である。エネイブルとの対決を見たかった。それはファンの皆さんと同様の視点で考えれば当然の思いだろう。
結局、6月2日に東京競馬場で行われるGⅠ安田記念(1600m芝)への参戦が決まった。当初はここへ香港最強馬で世界ランク1位のビューティージェネレーションの参戦があると見られており、日本で夢の対決が実現するかと思われたが、ビューティージェネレーションの回避で実現しなくなった。大きな夢を膨らませたファンにとっては二重の拍子抜けになったというのが率直な印象だ。
アーモンドアイの凱旋門賞回避には生産者であるノーザンファームの意向が大きく働いている。牝馬は繁殖生活を送ったとしても産駒の頭数は限られる。例えば凱旋門賞を勝ったとしてもアーモンドアイが送り出す子供に高い値段がつくだけだ。ところが、牡馬が凱旋門賞を勝てば種牡馬価値がグンと跳ね上がる。ノーザンファームの生産馬でサートゥルナーリア、フィエールマン、ブラストワンピースら牡馬が凱旋門賞に登録しているのはそうした意図もあるからだろう。牡馬が挑戦するメリットは大きい。
ただ、種牡馬価値が上がっても、その需要が国内の他の生産者にあるのかどうかという話は別問題だ。種付け料が飛躍的に上がっても、それはノーザンファーム自身の繁殖馬に種付けするケースが多いわけで、欧州のクールモアのように種付け料が主な収入源なら問題ないが、ノーザンファームにとっては種付け料の上昇は生産コストの上昇にもつながるために痛しかゆしの部分もあるはずだ。
ノーザンファームは本気で凱旋門賞を狙っている
話が少しそれたが、ノーザンファームの戦略ではアーモンドアイよりもサートゥルナーリア、フィエールマン、ブラストワンピースらが馬場適性などを含めて凱旋門賞に合うという判断をしたことになる。これは尊重するしかない。サートゥルナーリアは日本ダービーの結果次第で凱旋門賞挑戦が具体化するのだろう。
フィエールマンは前哨戦として洋芝の札幌競馬場で8月18日に行われるGⅡ札幌記念(2000m芝)への参戦を予定している。ブラストワンピースはダービー当日の5月26日に東京競馬場で行われるハンデキャップレースのGⅡ目黒記念(2500m芝)に参戦する。凱旋門賞で59・5キロを背負うため、敢えて59キロの重いハンデを本番へ向けて経験させるというテーマで出走する。ノーザンファームは本気で凱旋門賞を狙うために用意周到に準備を始めている。
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