アーモンドアイ「凱旋門賞回避」の残念な事情 ダービーの翌週、安田記念が今季国内初戦に

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レースは前半少し行きたがったものの、いつでもスパートできる外めの位置につけると、直線堂々と抜け出した。6カ国から参戦した12頭を問題にせず、一昨年の覇者ヴィブロスを余裕十分に突き放した。最後に思ったほど差が開かなかったのは気を抜いたためか。とはいえ完璧なレース運びで世界デビューを飾った。レース後、国枝調教師とルメール騎手からは凱旋門賞挑戦を意識する発言が飛び出した。海外メディアも3連覇を狙うエネイブルの強力なライバルとして報じた。

ところが、アーモンドアイの帰国後にムードが変わる。遠征へ向けて陣営のトーンが急に下がった。「アーモンドアイは凱旋門賞に行かないらしい」。そんな噂が駆けめぐった。それは本当だった。そして、4月17日の発表につながる。いささか唐突なタイミングの発表となったのは、今年はゴールデンウイークが10連休となったため事務的な問題で凱旋門賞の登録の実質的な締め切りが4月18日だったからだ。

アーモンドアイが所属するシルク・ホースクラブはHPの会員向けのページで登録を見送ったことを報告した。「アーモンドアイを応援してくださる皆様」へ送られたメッセージは「凱旋門賞登録の見送りについて」だった。

この文書を引用すると「ドバイ遠征における新たな環境への対応・レース後の様子・長距離輸送での体調の変化などを精査した結果、凱旋門賞への挑戦はこれまでの本馬の経験上、コース・距離・斤量、そして初めての環境と全てがタフな条件となることから、環境適応力・レースそのものの本馬への負荷・ レース後のケア環境・長距離輸送などの条件を鑑みますと『ベストのレース選択ではない』、 との結論に至りました」と回避の理由を説明している。

総合的に考えたうえで登録を見送った

この発表を受けて国枝調教師が取材に応じた。「レース後の状況が心配。きっちりケアする必要がある」。オークス後から毎レース後に熱中症のような症状が見られた。レースで全力を出し切るだけでなく、汗をかきにくいために熱がこもる。足元がふらついたり呼吸も乱れる。ドバイターフの後にもあった。施設やシステムの違う海外で日本と同じようにレース後のケアが施せるかが難しいという判断だ。続いて国枝調教師は「負担重量や欧州の特殊な馬場など総合的に考えての決断」と語った。

凱旋門賞で4歳以上の牝馬は58キロを背負う。国内では背負うことのない厳しい斤量だ。ジャパンCで東京2400m芝2分20秒6の驚異的な世界レコードをマークしたアーモンドアイは軽い高速馬場が向く。フランスのロンシャン競馬場の重い芝への適性も考慮された。

国枝調教師はドバイターフ後に凱旋門賞への前哨戦として8月のイギリスのヨーク競馬場で行われるヨークシャーオークスへの参戦プランを語っていたが、欧州の芝を経験させて本番に向かうために長期滞在しなければならないというリスクも回避した。タフな馬場では現役時代に香港スプリントを連覇したロードカナロアの産駒が2400mの底力勝負に向いているのか疑問視する部分もある。

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