ソニーとMSがゲームで協業せざるをえない背景 元スクエニ社長が展望する5Gの新世代ゲーム

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――その際、ゲームソフトの開発会社が意識すべき点は何でしょうか?

編集を担当するキュレーターの存在だ。ノンプレイヤーもゲームを楽しむためには、視聴者の嗜好に合わせてカメラのアングルを調節したり、最適なCMを流したりする役割が必要になってくる。例を挙げるとしたら、ライブ配信サービスの「SHOWROOM」が近いだろう。

ガラガラポンの戦いが始まる

クラウドゲームに適しているのは、同じ難易度のもとで大勢が競い合うものだ。「自分がすごい」ではなく、「みんなの中の自分がすごい」という自己実現は、感情を昇華させる方向が、従来のゲームデザインとは違う。従来の家庭用ゲームは、それぞれのプレイヤーが楽しめる形に最適化するのが主流になっているのと比べて正反対だ。

和田 洋一 (わだ よういち)/1984年、野村証券入社。2000年、スクウェア入社。2001年に同社代表取締役社長兼CEOに就任。2003年スクウェア・エニックス代表取締役社長に就任。2008年から2013年まで持株会社スクウェア・エニックス・ホールディングス代表取締役社長を務める。社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長や、経団連の著作権部会長なども歴任。現在メタップスやマイネットの取締役を務める

ソフトメーカーよりむしろ、ソーシャルメディアが得意としてきたことであって、両者が横連携すれば、一気に「クラウド2.0」時代のコンテンツが出てくる。開発環境が整ってくれば、会社の規模や過去の実績とは関係ないガラガラポンの戦いがスタートする。

――和田さん自身は、クラウドゲームを盛り上げていくためのコミュニティ作りを進めています。

所属や利害に関係なく、「この指とまれ」でやりたい人が参加できる開放的なコミュニティを作りたいと思い、啓発のために講演などをしている。会社を立ち上げるというよりは、IT系の人とゲーム系の人が交流できるような、あえてゆるやかな組織にしたい。すでに、「やりましょう」という声はジャンジャン来ている。

実は、大企業のゲーム開発者と話をすると、「(クラウドゲームの開発を)やりたいんですけど、予算が通らないんですよね」という話ばかり聞く。組織の中で孤独な彼らが横でつながれば、及び腰の企業へのレジスタンス(抵抗勢力)にもなる。

週刊東洋経済』5月25日号(5月20日発売)の特集は「5G革命」です。
印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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