広告市場は09年度も大幅減少に! メディアは火だるま
「まだ決まらないのか」--。広告代理店業界は今、異例の事態に慌てている。新年度まで3カ月を切り、普通なら次年度広告予算が見えてくる時期だというのに、「自動車メーカー各社は何も言ってこない」と、大手広告会社社員が口をそろえる。
自動車メーカーの広告は、国内4マス(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)広告の6%強を占めるうえ、1社当たりの広告宣伝金額が大きい。下表ランキングを見ればわかるように、トップ5に3社が顔を出す。こうした大手の動きが見えないと、来年度の展望が開けないのだ。
下グラフのように2008年度は4マス向け広告費が前期比2ケタ減と過去最大の下落率になる。しかも、テレビ広告は、スポットだけでなくタイム(番組スポンサー広告)も放映前のギリギリまで枠が埋まらないことが頻発。まさに綱渡りの展開だった。「来年度はさらに底抜けの減少になるのではないか」--。こんな恐怖に、テレビ・新聞、代理店業界はさいなまれている。
はたして、大手広告主は09年度に向けた広告宣伝費をどのように考えているのか。各業界の最前線を探ってみよう。
国内最大の広告主は新聞軸に出稿を急削減
09年度の動きが見えない自動車業界だが、最大の焦点は何といっても単体1083億円、連結4845億円(前期)と巨大な広告宣伝費を計上するトヨタ自動車(広告宣伝費ランキング1位)の動きだ。昨年秋には奥田碩トヨタ相談役がマスコミの厚生労働省批判に対して「何か報復でもしてやろうか」と広告引き揚げを示唆し話題となったが、メディア業界と広告業界にとってはそれよりもむしろ8月の「トヨタ、09年3月期の広告宣伝費3割削減」という一部報道のほうがショッキングだった。実際、年明けの1月以降は全面停止に近い勢いで急圧縮。「09年度は広告費を半分程度へ減らすと聞いている。価格の適正化、つまり値下げも求められている」(大手新聞役員)。
トヨタの「プリウス」、ホンダの「インサイト」など新型ハイブリッド車が続々とお目見えし、電気自動車元年ともいわれる今年は本来なら“当たり年”になるはずだったため、メディアや代理店側の失望はさらに大きい。
特に厳しい見直しの対象になっているのが紙メディア。読者層がセグメントされている雑誌はまだ出稿価値があると認識されているが、新聞広告は大幅に削減される可能性が高い。もともと自動車メーカーにとって新聞広告は、新車発売を告知するためにお約束的に出稿してきたにすぎない。「一昔前は週末の新車発表会のタイミングに合わせて出稿できるうえ、地域ごとに近隣ディーラーの名前や住所を刷り込むことができる新聞広告は、販売店サイドから喜ばれる広告形態だった。しかし、すでにその時代は終わっている」(関係者)。
総額抑制の中で、インターネット向けの広告を増やすような動きも見られない。高額商品でスペックも複雑なため、ライバル商品との比較もしたいのが自動車。本来ならネット広告の出番となるはずだが、あまり浸透していない。実際、メーカーのホームページ来訪者もスペックと価格をチェックする程度で、滞留時間は長くないという。
むしろ、メーカーは即効性のある新たな“メディア”の可能性を模索し始めている。最近の成功例がトヨタの小型車「パッソ」と東京ガールズコレクション(TGC)のコラボだ。TGCは日本最大の消費者参加型ファッションショーで、これと組んで広告・販促展開したパッソは好調な売れ行きを示した。「TGCの観客は2万~3万人程度だが、その背後に700万ユーザーが存在する。いわばマスメディアだ。パッソはいいところに目をつけて成功した」(広告業界関係者)。