広告市場は09年度も大幅減少に! メディアは火だるま
急減余儀なくされた消費者金融の広告費
自動車、電機などの大口広告主は、総じて厳しい広告宣伝予算で新年度に臨むことは間違いない。となれば、新興勢力をどのように呼び込むかも、マス広告にとって重要な戦略になってくる。1990年代前半にテレビ広告を席巻した新興勢力は、消費者金融。しかし上限金利引き下げによる過払い金利返還問題により、すっかり収益構造が悪化。今でもアコム(84位)、プロミス(94位)が上位に残っているが、5年前と比べた減少幅は大きい。
消費者金融もそうだが、新興勢力には公共電波に乗せた宣伝に対して批判を受ける業種が多い。「最近では宗教関係のスポンサーが急増しており、各局ともどこまでなら掲載していいか、頭を悩ませている」(テレビ関係者)。
そして、古くて新しい課題であるパチンコ・パチスロ業界への対応にも苦慮しているところ。昨年度の上位にはセガサミーHD(48位)、SANKYO(71位)が食い込み、今では消費者金融に代わる成長株だ。
パチンコは不況知らず、とよく言われる。「かつてよりは景気変動との連動性が高くなった」(ホール関係者)というものの、この年末年始もホールへの客の入りは上々だった。景気後退の影響で、遠出せず近隣で休日を過ごす消費者が増えたことに加え、1玉4円が相場のところ、1円で貸し出す「1円パチンコ」と呼ばれる安価で長時間楽しめる台の設置が拡大したことも、集客増に一役買っている。
キー局でも解禁されたホールのイメージ広告
パチンコ業界の広告はこれまで地方局におけるホールの広告が中心だった。新聞の折り込みチラシと同じ感覚で、「新店オープン」「新台入荷」などのテレビ広告は地方局にとってのドル箱だ。
ただ在京キー局では、こうした広告はまだ解禁されていない。パチンコ業界では、風営法などの法律、警察等の行政指導のほか、地方公共団体の条例やメーカー、ホールなど業界団体の自主規制で広告宣伝を縛っている。これに加えてテレビ局ごとの考査がハードルだ。
ホールの場合、在京キー局での放送は企業イメージを訴える広告に限られ、試験放送が00年代初頭、本格的な解禁がようやく07年から。たとえばホール最大手のマルハンのテレビ広告はフジテレビ以外のキー局で放送している。ホールによっては、さらに放映可能な局が限られる場合もある。
ホール以上に目立っているのが、パチンコやパチスロ関連のCMだ。しかし、テレビCMの歴史は浅く、メーカーの広告が本格的に電波に乗り出したのも00年以降。当初はパチスロ「エヴァンゲリオン」(SANKYO系のビスティ)やパチンコ「ウルトラマン」(京楽産業)など、題材となる映像コンテンツそのものを前面に押し出したCMが中心だった。
キャラクターを含むメディアプロモーションでパチンコ台をヒットさせる宣伝手法に先鞭をつけたのが、SANKYOだ。07年発売の「KODA KUMI FEVER LIVE IN HALL」の投入に際して、人気歌手の倖田來未を登場させたセールスプロモーションを、テレビ広告やホール向け宣伝素材で展開。続くパチンコ「創聖のアクエリオン」でも、同名アニメーションのテレビ広告を打つことで機種の大量販売に成功した。08年3月期は業績も回復し、株式市場でも「SANKYO復活」を印象づけ、関係者に「テレビ広告を流せばヒットにつながる」との意識が強く浸透した。
パチンコやパチスロは、ゲーム性とギャンブル性のバランスや完成度がヒットを左右する。一方で、キャラクタービジネスの成熟からパチンコやパチスロへも展開が広がり、テレビ番組のアニメや時代劇のキャラクターを採用した機種が複数ヒットした。08年からはSANKYO、京楽のほかにも藤商事のパチンコ「宇宙戦艦ヤマト」やセガサミーのパチンコ「北斗の拳」の広告が放送され、クライアント減少にあえぐテレビ界で、半ば救世主の感もあった。
だが、過ぎたるは及ばざるがごとし。パチンコ広告への視聴者のクレーム増加に配慮してか、すべてのパチンコメーカーが加盟する業界団体、日本遊技機工業組合は、子供も視聴することが多い朝とゴールデンタイムでの広告を4月から自粛する。すでにホールからは「大量にテレビ宣伝しても結局、集客や台の稼働率を左右するのは機種の完成度」との声が出始めており、今年はピークアウトする可能性も出てきた。
既存業界が厳しく、めぼしい新興勢力もない--。テレビを中心に、4マス広告は、ますます厳しい新年度を迎えることになる。
(週刊東洋経済)
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