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「幼稚園から物書き目指した」芥川賞作家の努力 アスリートのように執筆する上田岳弘の流儀

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  • 川下 和彦 quantum代表取締役社長兼CEO/クリエイティブディレクター
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いつも頭が冴えているとは限らない。自分の力で思うように発想をコントロールすることができないのが、クリエーティブな仕事というものだ。しかし、最初から満点を目指すのではなく、まず強制的にでも一定のリズムでアウトプットを生み出して、それを磨き上げていくというのが上田さんのやり方だ。

「いちばん困るのは、書いていて興奮しなくなることです。そこで、毎日少しずつ書くペースを上げてきました。今のところ、1日2時間で4000字を書いたのが最高記録ですが、その後はさすがにぐったりしましたね(笑)。書くスピードを上げていくと、ゆっくり考える暇がないので、まるで新しい競技に挑戦しているような感覚です」

しかし、小説は単純にアウトプットを続けるだけでは、読者の関心を引きつける読み物にならないのではないだろうか。上田さんはそんな疑問を一蹴する。

今後のビジョンは?

「物語はどう転がっていくかわかりません。ですが、シーンごとのつながりや人の感情を動かすものがないと、作品は成り立ちません。ですから、物語を転がす駆動装置を見つけてきて書くようにしています。

物語を収束させる際は、例えば中編ならば200枚が原稿の目安なので、180枚ぐらい書いたときにカードが出揃います。それまでに出ている手札を使って、ワンペア、スリーカードのような役をつくります。それがフルハウスだときれいに締まりますね」

上田岳弘(うえだ たかひろ)/1979年、兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業。2013年『太陽』で新潮新人賞を受賞しデビュー。2015年『私の恋人』で三島由紀夫賞を受賞。2016年『GRANTA』誌のBest of Young Japanese Novelistsに選出。2018年『塔と重力』で第68回芸術選奨新人賞を受賞。2019年『ニムロッド』で第160回芥川龍之介賞を受賞。著書に『太陽・惑星』『私の恋人』『異郷の友人』『塔と重力』などがある。

一流のアスリートは、ルーチンの練習を繰り返し、もの足りなくなってきたら少しずつ負荷を上げていくことによって実力を積み重ねていくという。

アスリートに限らず、ほかの仕事、たとえ偶然に左右される度合いが大きいクリエーティブな仕事であっても、ルーチン化が結果を生むことにつながると、上田さんは自らの実績をもって証明してくれる。

最後に、これまでビジョンと現状のギャップを埋めることでいくつもの夢を現実にしてきた上田さんに、これからやってみたいことを聞いた。

「これまでは、『世界に対する、こういう捉え方が面白いと思いませんか?』という私なりの視点を味わってもらえるような作品を書いてきました。

『キュー』の次以降で単純にストーリーが面白い、物語が面白い小説を書いてみたいと思っています」

これまでの作風にはない上田作品になるのか。それを読める日が、今から待ち遠しい。

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