「小栗旬」を思わす南アフリカワインの色気 ワイン産地として注目される理由とは

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さて、私が今回ご紹介したい南アフリカからの1本は、ステレンボッシュ、パールと同じく、西ケープ州の注目の産地、“スワートランド”のシュナン・ブランです。

(筆者撮影)
ワイン名:Kloof Street Chenin Blanc(クルーフ・ストリート・シュナン・ブラン)
生産者:Mullineux Family Wines(マリヌー・ファミリー・ワインズ)
生産年:2017年 
産地:南アフリカ共和国西ケープ州スワートランド地区 
ブドウ品種:シュナン・ブラン100%

グラスに注がれた姿は、しっかりとした色合いのレモンイエローで凛としています。輝きがあり非常にクリア。外観からもよく熟したブドウから丁寧に造られたワインということが感じられます。香りはシュナン・ブランらしいぎゅっと濃縮したフルーツのニュアンスはあるのですが、甘さが前面に出ることなく、ミネラル感や潮っぽさも感じられ、洗練されて非常にエレガントな印象です。

若さと大人の魅力が合わさった味

飲むと第一印象はとてもなめらかで、すっーと体に入ってくる感じがします。ボリュームやエキス感はあるのに、押し付けがましさがなく穏やかで優しい。シュナン・ブランの特徴であるシャープな酸味も、とても丸みを帯びていて心地よい余韻をつくっています。まだまだ若いワインなのですが、フレッシュでとがった印象よりも、カドが取れ大人の魅力がにじみ始めたような感じがして、あっという間にグラスが空いてしまいます。

このワインを有名人に例えるなら、俳優の小栗旬さんでしょうか。若い頃から端正な顔立ちと演技力でとても人気のある方だったと思いますが、とくにこの数年でとても奥行きのある演技をされる俳優さんだなという印象が強くなりました。シュナン・ブランの柔らかさとシャープさを併せ持つ幅の広さ、若さの中ににじみ出る大人の魅力、才能のポテンシャル……そんなワインの魅力が、カリスマ的なオーラを感じさせる小栗さんを彷彿とさせます。

(イラスト:くぼあやこ)

ちなみに、一般的にシュナン・ブランから造られるワインは、味わいに果実味と酸味のメリハリがあって、しっかりとした味わいの中華料理などと相性がよいと思っているのですが、このワインは和食の柔らかな味わいにもとてもよく合います。素材の味わいを生かしたシンプルなお料理をより引き立ててくれるのです。例えば肉じゃがでいうと、このワイングが肉の風味とジャガイモのミネラル感やほんのりとした甘味に輪郭を与え、うま味が口の中でいつまでも続く余韻をつくってくれるようなイメージです。

2000円台でこんなに魅力的で完成度の高いワインを買えるなんて、やはり南アフリカは、いま大注目の”旬な”ワイン産地ですね。

杉山 明日香 理論物理学博士、ソムリエ、唎酒師(ききざけし)

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すぎやま あすか / Asuka Sugiyama

佐賀県唐津市出身。有名予備校の数学講師として教鞭を執る傍ら、ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策の講座を主宰。また東京・西麻布ではワインバー「GOBLIN(ゴブリン)」 を、パリでは日本酒&シャンパーニュをテーマにした和食店「ENYAA(エンヤー)」をプロデュースしている。著書に『ワインの授業 フランス編』『ワインの授業 イタリア編』『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』『おいしいワインの選び方』など。

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