あのシヤチハタが令和でも強い存在感放つワケ 業績は伸長、「印章の代名詞」であり続けたい
「長年、オフィスに大量納品の商売をしてきたため、一般消費者向けの発想に欠けていた。そこで取り組むのが『もっとたのしく! シヤチハタ委員会』というプロジェクトです」
舟橋氏がこう話す活動からは、さまざまな商品が生まれてきた。
例えば2014年には、新生児用おむつの名前書き「おなまえスタンプ おむつポン」を発売した。2003年から発売する、プラスチックなどの非吸収面に押せるインキの応用で簡単に押せる「おなまえスタンプ」の派生商品だ。大人用紙おむつもあるので、介護施設に入居するお年寄りにも応用できる。
「おりがみ工場」という商品もある。プラスチックのフレームに、チラシや包装紙などをはさめば、はさみも使わずにおりがみ用紙ができるというもの。子どもと高齢者が対象で、子どもは情操教育に、高齢者には頭と手先を使うことで、認知症予防も期待するという。
いずれもニッチ商品だが、注目したいのは「新商品」を発売する気風だ。メーカーは新商品を発売しようとすると社内が元気になる。研究開発にも刺激を与えてくれるだろう。
「成熟市場でもやり残したことがある」
伝統事業を守旧するのではなく、活性化させる姿勢は大切だ。筆者が時々思い描く「成熟市場でもやり残したことがある」という言葉も紹介したい。
花王の“中興の祖”と呼ばれた丸田芳郎元社長の語録だ。「もう十分やりつくした」「これ以上、消費者は求めていない」と思えば、送り手の発想も止まってしまう。
最後に舟橋氏に、取材意図で掲げた「シヤチハタの生き残り」について聞いてみた。
「技術の深掘り、品質の深掘りをしたうえでの新しさが大切です。どんな時代になっても、紙書類や電子書類の片隅に『印章』を押す行為は簡単になくならないと思います。当社が創業して今年で94年。ニッチな市場ですが、1世紀かけて“印章ならシヤチハタ”と思われる会社になったので、これからもそうありたい」
ビジネスの現場で「カジュアル化」が進む一方、「公的文書」など事務手続きの分野では、リスクマネジメントを含めて一定の重みも大切だ。シヤチハタが「成熟市場でやり残したこと」をどう見つけて訴求していくのか。電子化の流れとともに注視したい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら