あのシヤチハタが令和でも強い存在感放つワケ

業績は伸長、「印章の代名詞」であり続けたい

こうした話を聞くと「ネーム印」の訴求手法は、シヤチハタが全事業の7割強を占めるBtoB(企業対企業)から、3割弱のBtoC(企業対個人)へ事業比率を高める象徴に思える。一般消費者に手に取ってもらう訴求を工夫すれば、「大量納品」意識も薄れるだろう。

ちなみに舟橋氏は日本の大学卒業後に渡米し、リンチバーグ大学大学院を卒業。帰国後は電通に勤めた後で入社した。電通時代は家電メーカーの販売促進支援も手がけたという。そうした経験を踏まえて「これだけ文具にこだわる国民は日本人だけ」と話す。

25年手がける「電子印鑑」は道半ば

はんこやスタンプ台のイメージが強いシヤチハタだが、実はIT化の取り組みも早かった。「ウインドウズ95」が日本に上陸した1995年に「パソコン決裁」という商品を発売している。

これは「電子印鑑」で、紙の書類に押す印章ではなく、パソコン上の書類に押すシステム。バージョンアップを重ねて、現在は「パソコン決裁Cloud」などで提供する。紙の書類のように、上司が座席にいるのを見計らって重要書類・申請書類に捺印をもらう手間もかからず、業務効率化につながるものだ。だがいち早く参入し、価格も高くないが事業は伸び悩む。

「現在、約1万数千社にご利用いただいていますが、期待したほどには伸びていません。電子決裁ですべての業務を行う会社は少なく、売上高もまだ数億円程度。大企業でも『クラウドは使用しない』『重要書類は紙書類で決裁』を社内ルールにする会社も目立ちます」(舟橋氏)

「令和時代」でも、社内決裁は昭和時代の手法が主流だが、諦めてはいない。

「スマートフォンなどタブレット端末が当たり前となり、端末を使って外出先で決裁をする需要が高まりつつあります。IT企業と連携して『デジタルの稟議(りんぎ)でもシヤチハタ商品を導入する』ようにしたい。そのためにIT関連技術も磨き続けます」

ちなみに25年前の開発時は、SE(システムエンジニア)を大量採用せず、当時、西和彦氏が率いていたアスキー・ネットワーク・テクノロジー社と提携し、そこでシヤチハタ社員がノウハウを学んで開発したそうだ。基盤技術は自社で会得することも同社のDNAだという。

印章事業の捺印部分は、カーボンや薬品を配合して自社で製造し、印章本体のプラスチックも成形は社内で行う。インキも顔料、染料、溶剤を調達して何万種類もの配合を社内で研究開発している。

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