こういったことを背景に、運転適性の見極めも厳しくなっています。まず、71歳以上は免許の有効期限が短縮されています。また、免許更新時は、70歳以上は高齢者講習受講が、75歳以上は高齢者講習受講に加え認知機能検査受検が、それぞれ義務づけられています。
認知機能検査の結果、必要があれば専門医の診察を受け、認知症と診断されれば、免許の停止・取消となります。2017年には、この認知機能検査が厳格化され、専門医の診察を受けた75歳以上の1割程度が免許の停止・取消となりました。
また、運転免許の自主返納(申請による免許取消)が進められています。自主返納制度は、運転免許が不要になった人や、加齢に伴う身体機能低下などによって運転に不安を感じるようになった高齢ドライバーが自主的に運転免許の取消(全部取消または一部取消)を申請する制度で、1998年に始まりました。
2002年には自主返納者のうち希望者に、本人確認書類として利用可能な「運転経歴証明書」の発行を始め、それ以降ようやく定着してきました。
返納タイミングと移動手段の確保が課題
免許の自主返納は浸透してきており、2008年に2.9万人だったのが、2018年には全国で42.1万人と2年連続で40万人を超えました。年齢別の返納率をみると、とくに75歳以上で上昇しています。2017年の認知機能検査の厳格化の効果もあったと思われます。
しかし、課題も多くあります。まず、75歳以上で返納率が上昇しているとは言っても5.18%にとどまっています。
また、現行の免許返納は自己判断に委ねられる部分が多いのですが、「超高齢社会と自動車交通」(国民生活センター『国民生活』2016年11月)によると、「自分の運転テクニックなら充分危険回避できる」と考える割合は64歳以下では2割に満たないものの、65~69歳で29%、70~74歳で46%、75歳以上で53%と年齢が高いほど高くなっています。
しかし、自由な移動は、高齢者の自立した生活に欠かせないことなどから、子どもでも親に自主返納を説得するのは難しいと言われています。
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