これらの飲食店の中には、2008年の北海道洞爺湖サミットが開催された有名ホテルの鉄板焼きなどを担っていた紺谷忠司シェフなどもおり、地元食材を使ったA級グルメを目指して広島市都市圏を中心に多くの人々が訪れています。
とくに、新規に開業した飲食店の経営は極めて秀逸です。劇的に安い不動産価格という大きなメリットを生かしつつ、一方でレストランの単価は「広島市の都市圏価格」を実現することで、中には1年のうち約2カ月ほどを休むような飲食店が出てきています。
「休む」ことが、次を生み出す大きな価値になる
最低でも月に数十万円の家賃が必要な都市中心部に開業するレストランよりも、月に数万円で借りられたり、数百万円で物件購入が可能な田舎では、固定費が安いために、そもそものビジネスの構造が抜本的に変化するわけです。さらにインフラが充実した大都市に接続している田舎では、そのポジションを生かした事業が可能になるわけです。
この話を聞いて皆さんは「2カ月も休めて、ボロい商売してるなぁ」と思うでしょうか。それは違います。実際、美食の町として世界的に有名なスペインのサン・セバスチャンなどでは、シェフは1年のうち2カ月ほど休んで世界を回ってインスピレーションを受けて、次なるメニュー開発に生かしているのをご存じでしょうか。邑南町のA級グルメなら、日本国内でもそのようなモデルが十分に成立するというわけです。
こうした日本ではまだ新しいモデルに希望を見い出し、日頃「ブラックな職場」で安い月給でこき使われてきたような若いシェフたちが、今続々と邑南町に移り住み、飲食店開業を目指して準備をしているのです。
固定費を抑えつつも、付加価値の高い事業を組み立て、そして適切に休みをとる――。工業化時代には立ち遅れたというイメージになっていた田舎が、1周して時代の先端的な働き方を実現していることに注目する必要があります。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら