「労働時間の上限規制」が変える働くことの意味

働き方改革の本質を見失ってはいけない

その際、例えば極端な話、1カ月99.9時間の残業になった場合などは、もはや1分たりとも残業をさせることはできませんので会社は「残業禁止命令」を発出する必要があります。これは口頭ではなく、メールや文書で行うべきでしょう。

本上限規制の範囲内に労働時間を収めることは「至上命題」ですので、会社ごとに労働時間を短縮する方策を継続的に実施しなければなりません。

対策としてはムダな仕事や会議を減らし、人員配置や業務配分、仕事のやり方の見直しが中心となります。この点、ノー残業デーや朝型勤務(もはやあまり聞かれませんが、プレミアムフライデーも同様)は、あくまで早く帰れる雰囲気を醸し出すためのものにすぎず、本質的対策ではありません。

労働時間短縮の問題は、究極的には「この仕事はやらなくていいのか」という経営判断であるため、決して現場任せにしたり、労働時間の過少申告強要にならないように対策を講ずる必要があります。

「仕事をしたくてもできない」状況にフォローを

人事部門における現実的な課題として、「労働時間を頑張って減らしたら残業代が減った」というだけでは真面目な人ほどモチベーションが下がる結果となってしまいますので、評価制度・賞与の支払い方の見直しも必要でしょう。

最後に、若手のスキルアップ対策も忘れてはなりません。もちろん、今月からの上限規制対応をしっかりと行うことは必須ですが、一方で「仕事をしたくてもできない」状況にもなりますので、スキルアップに不安を持つ若手社員は思いのほか多く見られます。労働時間の短縮だけに目を奪われて本来やるべき仕事が放置されたり、誰かにしわ寄せがいったり、個人のスキルアップができないのでは本末転倒です。

この点を考えると、実は今回の法改正はある意味「残酷な」制度です。会社が業務命令として与える仕事の量には限度が生じますので、その分のスキルアップは個人に委ねられています。そのため、業務外でスキルアップを「しようとする人」と「しない人」では10年後に相当な差となって現れるからです。

いよいよ今月から始まる働き方改革関連法について、法律を守ることは当然として、本当に必要なことは何かを考えて働いていきましょう。

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