4冊の本が教えてくれた目指すべき経営の理念 実践して自分の知恵となるまで何度も読む

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第4水準と第5水準のリーダーを隔てるのは、個人としての謙虚さであり、いわゆる「人格」なのである。リーダーが自己中心的であったり、尊大であったりすれば、社員はついてこないし、パートナーの信頼も得られない。ビジネスにおいては、人格がいかに重要かという点をこの本は示唆していると私は思う。

また、第3章の「誰をバスに乗せるか」という記述も印象深い。つまり、「最初に人を選び、その後で目標を定める」ということを例えている。普通は「ここを目指そう」という目標を決めたうえで、そのために必要な人材を探すと考えがちだ。

ただ、ビジネスの世界では、目的を必ず達成できる保証はないし、先行きも不透明だ。情勢や時代の変化に応じて目的を変えるべき局面もある。だから、「どこに向かうか」ではなく、「誰と一緒にやる」かを優先し、その人たちとの議論の中で目的地を決めるべきだと説いているのだ。

したがって、目的地に賛同できない人は「バスを降りてもらう」とも言っている。弊社の場合は、企業理念を定めたクレドがあり、そこに共鳴してくれる人だけを採用するのが鉄則だ。

スタートアップの実践的教科書『トラクション』

4冊目に紹介するのは、シリコンバレーの多くのコーチから薦められたGino Wickman 氏が自身の経営経験から起業を体系化した『TRACTION: Get a Grip on Your Business』(未邦訳)を紹介したい。この本には、スタートアップとして絶好のスタートを切りながらも、それが長続きしなかった事例が検証されている。

その理由には、理念がなくて方向が定まらなかったり、組織や人の問題であったり、個人頼みで会社がスケールしない、などさまざまな事例が紹介されている。

そんな事例を踏まえ、企業が成長を続けるために具体的にどうすればよいか、ビジネスの実践的教科書と言える内容になっている。「トラクション」とは、自動車などで「地面をつかむことで生み出される推進力」という意味だ。つまりは「かみ合って前進する」という意味合いである。

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