広島の限界集落が奇抜な「かかし」だらけの事情 攻めすぎた観光キャンペーンに夫婦が協力

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当初、県観光課は森本さんに、県が作製したパネルの設置を依頼したという。しかし森本さんはそれを拒否。「かかしの里に異質なものは置きたくない」と思ったという。そしてその代わりに、頭部のないかかしを作成した。

頭の部分には、顔が出せるようにくりぬかれた地元紙・中国新聞の新聞紙に髪の毛と顔の輪郭が描かれたものを置き、よく見るとその奥には、「ひょっこりはん」に似た人物の絵が描かれている。

こうして、森本さんらしいユーモラスな、世界に類を見ない温かい顔ハメパネルが完成したのだ。

「この辺りは去年の豪雨では被害はあまりなかったのですが、2002年の台風ではうちの2階の壁も崩れました。周りでも家が流されたり、川が氾濫したりしました。

だから今回のキャンペーンには協力したかったのです」と森本さんは言う。県観光課がスポットを当てたかったのは、きっと「森本さん夫婦」だったのだろうと筆者は思った。

筆のパネル(写真:広島県観光課提供)

続いて、このパネルは化粧筆の産地として有名な熊野町に置かれたパネルで、後ろにある台に横たわると、髪が筆になるという相当斬新なコンセプトだ。

こんなに面白いパネルをたくさん設置しているのに、今回のキャンペーンの知名度は、充実した内容に比して全国的にそれほど高くないのだろうか。

実は広島県ローカルでは、キャンペーンの認知度はかなり高いという。

前編でご登場いただいた漫画家の田中宏さんがパーソナリティーをつとめる、RCC中国放送のラジオ番組「週刊 田中宏」(毎週金曜15:00〜16:50)でしばしば話題にしたり、地元メディアが取材したりということの効果があるようで、田中宏さんによると「地元の子連れ、ファミリー層からの反響が特に多い」そうだ。

県外で伸び悩んだ理由

 実は県外での「伸び悩み」には、ちゃんとした理由がある。県観光課の平野さんはこう話す。

「各エリアと連動してやるということで、一個一個パネルを置くのも自治体との調整など簡単ではありませんでした。パネルを置くのに時間がかかったので、策を打つ時間が少なくなってしまいました」

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