広島の限界集落が奇抜な「かかし」だらけの事情 攻めすぎた観光キャンペーンに夫婦が協力
「上多田集楽」を訪れた人は、集落の入口で釣りをする人が実は人間ではなく、かかしであることに驚く。そう、ここは最近一部の人たちの間で人気が高まっている「かかしの里」なのだ。かつては林業で栄え、人口も1000人いたというが、現在は人口100人未満、高齢化率7割を超える限界集落。その集落に、人口を超える約170体のかかしが置かれているのだから壮観だ。
しかも170体のかかしを全て作られたのはこちらの森本昌利・衣江さんご夫妻だというからすごい。半年もするとかかしは壊れるので交換する。そのため、延べ400体ものかかしを製作したことになるそうだ。
最初のかかしを作ったのは2011年7月のこと。衣江さんの父親が亡くなったためその遺品である洋服を着せて父親に似せたかかしを作った。そうしたところ「そっくりだ」と評判になり、近所の人たちが服を持ってきては「かかしを作ってくれ」と頼むようになった。
それに応じてどんどん作るうち、有吉弘行さん司会のテレビ番組などで取り上げられ、見物客が訪れるようになった。すると見物客が洋服を持ってきたり、全国から宅配便で送られてくるようになり、かかしの数はまたたく間に増えていったのだという。
かかしを通じて懐かしい人の再会も!
「かかし1体作るのにだいたい1週間かかります。でも、嬉しい。1人でも人が来てくれたら。テレビに映ると集落を出られた方が戻ってくる。そうすると妻が久々に懐かしい人たちと再会することができますから」と森本さんは目を細める。
当初は「集落からいなくなった懐かしい人の姿」を再現するために作られたかかしが、見物客やメディアの注目を浴び、それがさらに集落から去った人たちを集めることになった。「上多田集楽」が集落ではなく「集楽」と名乗っていることの深い意味を感じて心を打たれた。そしてこの村に広島県観光課がパネル設置を依頼したことの意味は、もうなんとなくお分かりだろう。
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