広島の限界集落が奇抜な「かかし」だらけの事情 攻めすぎた観光キャンペーンに夫婦が協力

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「攻めすぎた」がゆえにパネル設置が後手に回ってしまったのだ。11月から始まったキャンペーンにもかかわらず、1月末にはまだパネルは10点ほどしか設置されず、2月末になっても15点。3月に入る頃にようやく27点と、キャンペーン終了直前にやっとパネルが大量に登場したのだ。これでは、知名度を高めるには時間がなさすぎた。

渋谷109前で開催されたイベント。2枚のパネルが持ちこまれた(筆者撮影)

そして遅ればせながら、県観光課も大規模なPR作戦を敢行した。ホワイトデーの3月14日に渋谷の109前という超一等地で若者相手にイベントを開催したのである。冒頭で紹介した宇品の牡蠣のパネル(タナカカツキさん作)と、三原から「やっさ踊り」のパネル(五月女ケイ子さん作)を東京へと運び、通行人に顔ハメをするように呼びかけたのだ。そして、会場にはCYBERJAPAN DANCERSが登場し、広島県に行って「顔出しリレー旅」を行うことが発表された。

5月末まではパネルの設置を継続したい

 渋谷の現場に立ち会った広島県観光課の平野奈都子さんは「とても若い方たちに好評で、手応えを感じています。なぜ広島が顔ハメなの?という声も聞かれました(笑)」と話す。土壇場の作戦は功を奏したという評価のようだ。そして広島県は、3月末でキャンペーンは終了するものの、5月末頃まではパネルの設置を継続したいという。まだ、現地に行けばしばらくは面白いパネルを楽しめるというのは、パネル愛好家にとってもうれしいニュースだ。

 今回の広島県による、顔ハメパネルを使った一大キャンペーンは、若干の課題は残したものの、規模といい内容の面白さやチャレンジ性からも「日本の顔ハメ史上」に残る素晴らしいものであったと、取材を終えて確信を持って言うことができる。願わくば、広島県にはぜひ今後も日本の顔ハメ界をリードしていってほしい。さらには、触発された他の地域の公共団体や民間企業にも、この取り組みを超えるような面白い顔ハメパネルの活用をして欲しいと願うばかりである。

鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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