ロストフの14秒、川島永嗣が痛感した8強の壁 ベルギーに逆転負けを喫したW杯から早8カ月

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ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の解任からワールドカップに挑むまでを回想した川島永嗣(筆者撮影)

直近のロシア大会では、その大役を担った川島が賛否両論の渦に巻き込まれた。本番2カ月前にヴァイッド・ハリルホジッチ監督から西野朗監督に指揮官が交代、新体制が始動した5月から彼の様子は普段とは違っていた。

大会前のガーナ、スイス、パラグアイとのテストマッチでもどこか不安定さが垣間見えた。「国内合宿からいい入りができなかった」と本人も何度か話したが、モヤモヤを抱えたまま大舞台に突入したのは事実だったようだ。

「ヴァイッドが2カ月前にいなくなってしまったのはショックでしたよ。それでも前に進まなければいけないのが選手。その出来事はある程度は割り切っていました。それ以上に大きかったのが所属していたメスとの契約のこと。ブラジル後の4年間、無所属になって新たなチームを探す経験もして、自分としても相当踏ん張ってきました。その結果、昨季メスで約30試合出ることができたのに、最終的に2部に降格してしまいました。

それでも契約更新する方向だったのですが、新しい監督の『全部代えたい』という意向から話が立ち消えに。『また新しいチームを探さなきゃいけない』と思うと正直、苦しかったです。過去に2度ワールドカップを経験していたからこそ、ロシアには心身ともに落ち着いた状態で行きたかった。それを含めていろんなことを消化しきれなかった自分の未熟さを感じました」と川島は当時の複雑な胸中を打ち明ける。

「川島不要論」まで飛び出したグループステージ

その影響もあったのか、初戦・コロンビア戦(サランスク)で直接FKを決められ、第2戦・セネガル戦(エカテリンブルク)で自身がパンチングしたボールをサディオ・マネ(イングランド=リバプール)に押し込まれるという不本意な失点に見舞われる。

これを受けて、「川島を外せ」といった厳しい世論の批判も高まった。ワールドカップの注目度というのはすさまじく、一度批判が起きると「炎上」に近い状態になってしまう。渦中の川島にとっては、本当につらく厳しい状況だったに違いない。

けれども、強靭なメンタルを誇る守護神は第3戦・ポーランド戦(ボルゴグラード)でスーパーセーブを披露。日本の16強進出の立役者になった。大舞台の強さとブレない精神力を信じて使い続けた西野監督も、改めて彼に敬意を払ったことだろう。

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