ロストフの14秒、川島永嗣が痛感した8強の壁 ベルギーに逆転負けを喫したW杯から早8カ月

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しかし後半24分にヤン・フェルトンゲン(イングランド=トッテナム)のヘディングの折り返しが入ってしまい、その5分後にはマルアン・フェライニ(中国=山東魯能)に打点の高いヘッドを叩き込まれ、同点に追いつかれる。外国放送局は1失点目を「GKのミス」と評したが、欧州トップレベルのGK指導者は「スピードのあるボールでどんなにGKが手を伸ばしても取れない」と反論。ここでも川島のプレーに対して賛否両論が湧き起こった。

「僕自身が大事だと考えるのは、そういう一つひとつのプレーを結果論で語ることじゃなくて、本当に自分たちが2-0の状況で落ち着いて3点目を狙いにいけていたのか、ゲームをコントロールできていたのかということ。結局、結果論で話していても何も前に進まない。

川島 永嗣(かわしま・えいじ)/プロサッカー選手。1983年3月20日、埼玉県生まれ。大宮、名古屋・川崎を経て2010年から欧州挑戦。2018年8月よりフランスのRCストラスブール加入。2007年から日本代表。ワールドカップには南アフリカ、ブラジル、ロシアに3大会連続で出場(筆者撮影)

ワールドカップも日本代表も毎回変わる中で、優勝できるチームの基準はいったい何か。ベスト8の壁を超えられる基準とはどのようなものか。

それはパススピードなのかもしれないし、ボールコントロールかもしれないけど、基準を明確にして、自分たちでクリアできるようにならなければ、いつまで経っても勝てない。

それを自身で感じて考えられる選手が増えることが、日本のレベルアップになると僕は思いますね」

そうしみじみと話す川島も3度のワールドカップを経験して基準が上がったと実感した1人。

ベルギーが繰り出したラスト14秒の高速カウンターにしても、スピードとインテンシティー(強度)、クオリティのすべてが組み込まれていたと実感したからだ。

ワールドカップ8強は近いようで遠い

「ベルギーはあの時間帯に最短で最速で最も質の高いプレーを見せて得点した。そういう判断ができるレベルだったから3位になれた。僕らも似たようなシーンが出てきたときに瞬間的に仕留められる領域まで達することができるかどうか。そこに挑んでいくしか、ベスト8進出を果たすすべはないと思います」

ワールドカップ8強は近いようで遠い……。それを実感した歴史的証人の言葉は重い。われわれは今一度、川島永嗣の発言に耳を傾け、サッカー日本代表をいかに強化させていくべきかを真剣に模索していくべきだろう。

(文中敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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