教室はショールーム、ABCクッキングの最強戦略 NTTドコモと資本提携解消、海外拡大に活路
同社の特徴はスタジオだけではない。もう1つの特徴が、講師と生徒との距離の近さだ。2月のある平日の午後7時、東京・日本橋のABCのスタジオを訪ねると、4~5人のグループが調理テーブルを囲んでいた。教室内の生徒20人のほとんどが20~30代前半の女性。他社では年配の講師が目立つが、ABCの講師陣は生徒と同世代の20~30代が目立っている。
社名ロゴが入ったカーキ色のエプロンを着けていなければ、どの人が講師なのかわからないほどグループに溶け込んでいる。1人の講師につき生徒は最大5人まで。講師が一方的にデモンストレーションを行うのではなく、あくまで少人数の生徒の作業を中心にレッスンの内容を組み立てている。
「一人暮らしでご飯を食べるのは寂しいが、教室に来ると同世代の講師やクラスメートと話しながら料理を作れるので、楽しい」。日本橋のABCに通う20代女性はそう語る。単に料理を覚える場ではなく、「コミュニケーションの場」であることをABC側も重視している。
講師に必要なのはコミュニケーション力
こうした生徒との距離の近さは、実は講師に特別な力量を求める。決められた講義を一方的に提供すればいいわけではなく、レッスン含め2時間近く生徒がスタジオにいる間、飽きさせないコミュニケーション力が求められるからだ。
実際、生徒が講師名でレッスンを予約できるため、「100人待ち」の人気講師が出る一方、不人気講師のレッスンには1人も予約が入らないといった事態が生じたこともある。
その結果、「生徒を集められない講師は辞めていき、人気がある講師はさらにやる気を出すので、自然と講師の質が高まる」(柴田取締役)。熾烈な人気競争が、講師のコミュニケーションの質を底上げする。人気講師たちは、調理方法だけでなく、レッスンにきた生徒の名前もしっかり覚える。レッスン前後には、料理とは関係のない生徒の仕事の話なども聞き、再度同じ生徒がレッスンにやってくると、「この前の話はどうなったの?」などと声をかけて関係を築く。
単に料理を教える料理教室ではなく、その枠組みを超えたサービス提供とコミュニティづくりが顧客に「また来たい」と思わせ、リピーターをつくっている。
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